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2014年11月5日水曜日

牛乳の飲み過ぎは健康に悪い? スウェーデン研究

【AFP=時事】(一部更新)牛乳をたくさん飲むと、骨が強くなり健康になる──そう医者たちは言うが、英医学誌ブリティッシュ・メディカル・ジャーナル(British Medical Journal、BMJ)で29日に発表されたスウェーデン人を対象とした調査では、牛乳摂取量の多い人は、少ない人と比べて寿命が短く、女性では骨折が増えるとの結果が示されたという。

ヨーグルトを食べると糖尿病リスクが下がる、英研究

 研究チームは一方で、今回の研究で示された牛乳の摂取量と死亡率・骨折頻度との関連性については偶然の可能性も排除できず、推奨摂取量の見直しにつなげるためには、さらなる研究が必要だと注意を促している。

 スウェーデンのチームが実施した調査は、39~74歳の女性6万1000人を対象にした約20年にわたる観察記録と、45~79歳の男性4万5000人以上を対象にした11年間の観察記録に基づいたもの。参加者が提供したデータには、食事、ライフスタイル、体重、喫煙習慣、運動頻度、教育水準、結婚歴などが含まれる。この期間中、対象者のうち2万5500人が死亡、2万2000人が骨折を経験した。

 チームの論文によると、牛乳の摂取量が多くなっても骨折の危険性は低下せず、むしろ「死亡率の増加と関連する可能性がある」ことが分かったという。女性の10年間の死亡率は1000人当たり126人だったが、牛乳を1日3杯以上飲む人では同180人だった。論文の共同執筆者、スウェーデン・ウプサラ大学(Uppsala University)のカール・ミケルソン(Karl Michaelsson)氏がAFPに語ったところによると、1日に飲む牛乳の量が1杯以下の人では、この割合は同110人だった。

 女性が股関節部を骨折する割合は、牛乳摂取量が多い人で1000人中42人、平均で同35人、牛乳摂取量が少ない人で同31人だった。ミケルソン氏は「1日3杯以上の牛乳を飲む女性は、1日1杯未満の人と比べ、死亡率が90%高く、股関節部の骨折が60%多く、骨折全般では15%多かった」と述べている。

 一方の男性では、死亡率の差は比較的小さかった。10年間の死亡率は、1日3杯のグループで1000人中207人、平均で同189人、摂取量が少ない人で同182人だった。骨折の割合では、牛乳の摂取量による違いはほとんどなかった。

 また研究チームは、チーズやヨーグルトなどの発酵乳製品の摂取量が、特に女性の間での死亡率と骨折頻度の低下と関連することも発見した。推測される理由の一つとして、チーズと違い、牛乳には糖類の一種「D-ガラクトース」が多く含まれていることが論文では指摘されている。D-ガラクトースは、動物実験においては、老化を促進し、寿命を縮めるとの結果が出ている。


■スウェーデン人以外には当てはまらない可能性も

 ただ研究チームは、今回出た結果が、異なった乳糖(ラクトース)耐性を持つ別の民族グループには当てはまらない可能性を指摘している。また、牛乳の栄養レベルは、栄養価の強化や、乳牛の飼料などによっても違いが生まれる。

 また、研究結果は、「因果関係の逆転」と呼ばれる現象でも説明できる可能性がある。骨折の恐れが高くなる骨粗しょう症を患う人が、牛乳の摂取量を増やし、骨折が起きた際にその原因が牛乳にあるとされてしまう可能性だ。

 研究の欠点を指摘する専門家もいる。研究では、食生活の研究でありがちな欠点として、牛乳摂取量の記録を自己申告に頼っている他、対象となった男女の身体活動の種類(骨が強化される体重負荷運動であるか否か)を特定していない。

 ロンドン(London)のセント・ジョージ病院(St George's Hospital)のキャサリン・コリンズ(Catherine Collins)主任栄養士は、この研究が「答えよりも多くの疑問を生み出した」と指摘している。【翻訳編集】 AFPBB News

牛乳有害説に農林議員困惑 正確な情報発信求める

日本農業新聞 10月31日(金)12時18分配信
 「牛乳の飲み過ぎが健康に悪い」とするスウェーデンの研究結果に対し、自民党農林議員が困惑している。研究チーム自らが「偶然の可能性も排除できない」としているにもかかわらず、インターネットなどで大きく報じられたため。過去にも「牛乳は有害」という誤った情報が流布され、消費の減少につながったことがあり、「正確な情報を発信すべきだ」との声が上がる。

 問題の「牛乳有害説」は29日付の英医学誌に掲載された調査結果。スウェーデンの研究チームによる同国人の調査で「牛乳摂取量の多い人は、少ない人と比べて寿命が短く、女性では骨折が増える」との結果が示されたという。AFP通信などが伝え、日本ではヤフーをはじめとするインターネットのニュースサイトが大きく取り上げた。

 ただ同通信によると、この結果は「牛乳を1日に3杯以上飲む人」という、やや極端な例。また当の研究チーム自体が、牛乳の摂取量と死亡率や骨折との関連性については「偶然の可能性も排除できない」としているという。

 消費者に誤解を与えかねないこうした情報に対し、30日の自民党畜産・酪農対策小委員会でも懸念の声が上がった。

 江藤拓前農水副大臣は「生産者に迷惑をかける」と指摘。かつても日本の著名な医師が牛乳有害説を唱え、牛乳の消費に悪影響を与えた経緯を踏まえ、農水省に「何か反論はできないか」と正確な情報を発信するよう求めた。
日本農業新聞
最終更新:10月31日(金)12時18分
日本農業新聞
 




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