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2014年4月30日水曜日

「BRICSは金貸しに操られているのか?」 ~2:ロシア 金貸しによる人工国家からの脱却・プーチンの闘い

「BRICsシリーズ」の第2回。今回は、ロシア革命~ソ連建国の頃から金貸しの勢力下に置かれていたロシアを扱います。
ロシアと言えば、ソチ五輪直後のウクライナへの武力介入があり、そのままクリミア併合を強行しました。
その後、欧米諸国からの制裁を受けたりと、メディアの発表を見ていると、ロシアが悪者扱いされているように映ります。第1回でも述べたように「BRICs」とは、ゴールドマン・サックスが投資対象として命名した新興諸国です。
その投資対象ひとつ、ロシアがこのように制裁を受けているのは、なぜなのでしょう?
クリミアを武力制圧したからだというのが理由なのですが、果たしてそれは事実なのでしょうか?
ロシアは今、どうなっているのか。どうしようとしているのか。今回はその実態を観て行きます。
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■ソ連建国と崩壊、ロシア建国と市場化
 
もともとロシアは帝政時代の末期より、金貸しの介入がありました。ロックフェラーは、子飼いであるレーニン、トロツキー、スターリンをロシアに潜入させ、ロシア革命を起こし、ソ連を建国。強大な社会主義国家となり、冷戦下、アメリカと軍拡競争を繰り広げ、軍需産業を潤わせてきました。 
そして、世界世論が軍縮に向かうと、ソ連を崩壊させ市場化に舵を切ります。
以下、るいネットより引用
チェルノブイリ原発事故を機に欧米勢力の傀儡であるゴルバチョフがペレストロイカ(改革)を推進。
その一環で推進されたグラスノスチ(情報公開)の結果、旧ソ連政府に原発事故の責任があるとされた。そこで課された莫大な賠償金が決定打となり、ソ連は崩壊。
その後、ロシアの初代大統領となったエリツィンが欧米金融のフロント機関であるIMF(国際通貨基金)の助言に従い、彼らのいう「ショック療法」を受け入れた。急激な市場経済の導入である。
そこで乗り込んできたアメリカ人経済学者たちが指示したのは、多数の国営企業の民営化である。その結果、国家財産が旧体制で権力の座に就いていたユダヤ系ロシア人の私物となり、新興財閥「オリガルヒ」が生まれ、彼らは欧米のプロスポーツチームを買収するほど世界有数の億万長者になった。
彼らはルーブルの下落でも大儲けして、欧米勢の投資家とグルでロシアを食い物にし、ソ連崩壊後のロシア国民を貧困のどん底に叩き落としたのである。
そんな最中の2000年、プーチンが大統領となります。ゴールドマン・サックスが「BRICs」と命名したのが2001年。つまりプーチン政権は当時、金貸しにとっては絶好の投資対象として認識されていたのです。
■プーチンの反逆
以下、るいネットより引用
これに怒ったプーチンはユダヤ勢力に従うフリをして大統領の座を手入れると、態度を一変、それまで好き勝手にしていたオリガルヒを詐欺、脱税容疑で逮捕するなど追い出しにかかった。さらにプーチンは、欧米金融勢力とオリガルヒに乗っ取られていたメディアも掌握したのである。ロシア・トゥデイだけでなくロシアの報道機関が、アンチ・欧米金融権力として真実の報道をする姿勢にはこのような背景がある。
その後もプーチンは2011年11月13日のエントリーのように、ロックフェラー側からの圧力を徹底して排除し、ロスチャイルド側からの圧力も巧みに跳ね返しています。金貸し側としては、子飼いにしていたはずのプーチンに裏切られたかたちとなったのです。しかも莫大な現物資源を有している大国を自分たちが支配出来ない。なんとか支配下に置ける手立てはないのかと画策します。それがウクライナで起こった暴動なのです。
実は2010年に「ウクライナ内戦」で合意していた米英独リンクとあるように、ほぼシナリオどおりに勃発したのが、今回のウクライナ騒動である。ただシナリオ通りに行かなかったのが、プーチン大統領によるソチ五輪後の迅速な軍事行動であったようです。今や世界一と言われる原油埋蔵量を有し、欧州向け天然ガスの1/3を供給するロシアに対し、強硬手段をを取ったとしてもその勝敗は見えている。紹介記事はロシアの覇権をテーマに書かれているが、むしろリンク
リンクに書かれているように、米国オバマ大統領やドイツメルケルの背後にいる「金貸し」VS「プーチン」の闘いの延長線上にあるのが今回の事件だと考えるのが事実に近いのではないでしょうか。
上記は、るいネットウクライナ情勢の裏を読むより引用
プーチンが立ち向かっているのは、オバマやケリーなどではない。
もっと、大きな大きな「敵」のようだ。
そして、多くの国々が彼らの影響下になる中、真に対峙できるのは、ロシアのプーチンしかないのであろう。プーチンですら、呑み込まれてしまったら、強烈な格差社会の中、国も地域もなく、すべてのモノが喰いつくさえるであろう。
ウクライナの出来事は、けっして日本にも、無関係ではない。
TPP交渉のとき、何でマレーシアやベトナムが、公然と米国の要求に楯突けたのか?
それは、シリア問題など、米国の影響力がかなり後退したからではなかろうか。
 今、グローバル化により、各国の主権も、その国の伝統文化も、そして人と人とのつながりも、すべてが食い尽くされようとしている。
すべてが「お金」という尺度で統一され、お金の力のあるモノに、猛烈な勢いで世界が支配されようとしている現実。
プーチンが今、背負っているものは、ただロシアやロシア民族だけではない。各国の国の主権、その地域の伝統文化、経済、人々の生活などなど、人類史に残る大きな戦いを行っていると言えるのではなかろうか。
■まとめ

・金貸しは、ソ連という人工国家をつくり東西冷戦を演出し軍需産業で儲けた。
・ソ連崩壊後はロシアとなり市場開放。巨大資本が国内の産業を乗っ取った。
・金貸し支配下のもと、BRICsとしてさらに金儲けの投資対象となる。
・金貸しに従順なフリをして大統領になったプーチンが金貸しを裏切り反逆。
・現物資源の保有国世界一のロシアをあきらめない金貸しと、
 それを跳ね返すプーチンの闘いが繰り広げられている。
かつて金貸しの多極化支配戦略のもと支配下に置かれていたロシアは、プーチンによって反転。
市場経済システムの崩壊が秒読みに入った今日、金貸しとしては支配体制を継続していくには、実物を確保しておきたい。そのためにはロシアをなんとか手中に収めたいところ。金貸しとプーチンは、いまや形勢が逆転していると言って良いでしょう。疑問として残るのは、なぜプーチンはこれだけ強気なのか、という点です。
いくら現物資源を多く有しているとはいえ、ここまで金貸しを真っ向から跳ね返すには、何か背景があるはずです。
これは全くの仮説ですが、プーチンは、欧州貴族をはじめ世界の金主を味方につけたのかも知れません。
金貸しは、所詮は金主の使い駒です。その金主も市場経済システムの限界を察しており、であれば次の安定基盤を求めていてもおかしくはありません。そんな金主達がロシア側についたのではないでしょうか?
このあたりは、継続課題として今後も追求していきます。
次回はインドを扱います。お楽しみに。

2014年4月28日月曜日 多国籍企業による「日本人の奴隷化」が着々と進行している

遅れた話:

2000年に入って企業が正社員で人を雇わなくなったという現象が起きた。これによって、多くの日本人が非正規労働というスタイルで雇われるようになった。

日本の正社員は、終身雇用が当たり前だった。しかし、グローバル社会の中で、激しい競争に巻き込まれた企業は、今までのように高賃金の労働者を雇う余裕がなくなった。

世界中の企業が、競争に勝つために「高賃金の人間を切り捨て、低賃金の人間を雇う」という動きをするようになった。

これはそっくりそのまま先進国の労働者を切り捨て、途上国の労働者を雇うという動きだったのだ。

先進国の労働者を抱えていたらその高賃金を商品に転嫁しなければならないが、もうそんな余裕がなくなったので、正社員を終身雇用で雇うというスタイルは破綻した。

だから、日本の企業も2000年に入ってから怒濤のごとく非正規労働に切り替わっていったのである。そして、実はこの動きを多国籍企業も日本に入り込むために首を長くして待っていた。

会社にとって社員はコストにしか過ぎない


日本の労働者は質が良く、粒が揃っており、勤務態度は優秀で、しかも技術もある。海外の企業から見れば、日本の労働者を安く使い捨てにできるのであれば、これほど素晴らしいことはない。

しかし、日本という国は労働者の権利が非常に守られた「企業にとってはやりにくい特殊な国」だった。

日本人の多くは「会社は社員のもの」という意識を持つくらい会社に依存している。

本来、会社にとって社員はコストにしか過ぎないので、企業は明確に「株主のもの」である。これは資本主義の中では覆すことができない常識だが、こと日本に関しては会社は社員のものという不思議な感覚が蔓延している。

それは会社が社員のことを一生懸命に考えていたからでもある。福利厚生も労働者の権利も至れり尽くせりで、労働者は「守られていた」のである。

だから、社員は会社と一体化することができて、一種の運命共同体になっていった。

しかし、グローバル化した多国籍企業は、売上が低迷したり、事業形態が変わったとき、すぐにリストラできる環境が必要であり、一生に渡って会社に依存するような人間はむしろ邪魔になるだけなのである。

「必要な人材はすぐ雇える」
「要らない人間はすぐに捨てられる」

多国籍企業にとっては「利益を極大化する」ことが使命であり、労働者の生活や人生など何の関係もない。ところが、日本では労働者が手厚く守られて、労働者を使い捨てにする環境になっていない。

だから、多国籍企業はTPPによって日本の労働環境を「開放」しようとしているのである。

オバマ大統領も単なる操り人間にすぎない


オバマ大統領がTPPを無理やりねじ込んできているのは、オバマ大統領も多国籍企業の支持がないと大統領の座を守れないからである。大統領と言えども、選挙に勝つためにはアメリカの国益を拡大化させなければならない。

しかし、ここで勘違いしてはならないことがある。

アメリカの国益を拡大させるというのは、アメリカ人の権利を利するという意味ではない。アメリカの多国籍企業の利益を利するという意味だ。

アメリカ大統領は、常にアメリカの多国籍企業から多額の献金を受けており、その政策はNFTC(全国貿易協議会)によって大きな圧力を受けている。

だから、オバマ大統領はアメリカの多国籍企業の代理人であり、多国籍企業によって操られている人形みたいな存在であるということだ。オバマ大統領だけではない。すでにアメリカの政治家の99%は多国籍企業の代理人だ。

だから、TPPはアメリカの多国籍企業が儲かるために、自分たちに邪魔な日本の規制を撤廃させるためのものであるという見方をするのが正しい。

今、日本に起きている労働者を巡るすべての動きは、日本人労働者の今まで享受してきた権利をどんどん剥奪していくものであるということは、もっと強く認識されてもいい。

たとえば、ざっと考えただけでも、昨今の日本では以下の3つの動きが加速している。

(1)国家戦略特区
(2)労働法の改正
(3)法人税の減税

この3つは、バラバラに起きているこのように見えるかもしれないが、日本人を使い捨てにするための方策であるという方向性では完全に一致しているものだ。

一見、美しい言葉の裏にあるものが恐ろしい


国家戦略特区では何が検討されているのか。政府は以下の目的があると説明している。

(1)経済社会の構造改革を重点的に推進する。
(2)産業の国際競争力を強化する。
(3)国際的な経済活動の拠点の形成を促進する。

一見すると、美しい言葉が並んでいる。何が悪いのかよく分からないというのであれば、上記の3つの本当の意味を分かりやすく説明しよう。上記の3点は労働者側から見ると、このような意味なのだ。

(1)日本独自の終身雇用など完全にやめさせる。
(2)国際的競争力のため、解雇しやすい環境にする。
(3)多国籍企業がどんどん入り込めるようにする。

「国家戦略特区は、解雇特区ではないか」と激しい批判が出ているが、もちろんその通りである。また、この経済特区では以下のような美しい言葉もある。

「シルバー労働者に働き口の機会を与える」

しかし、高齢者は若い労働者と同じように働く体力も能力も失われているので、企業には以下を認めるというのである。

「最低賃金以下で働かせてもよい」

一見、美しい言葉で労働者の権利を守るような話をしているのだが、それは建前であって、本音の部分を見ると、まさに労働者の切り捨て、最低賃金の撤廃等、多国籍企業に都合がよい話が並んでいることが分かるはずだ。

いずれにしても企業に都合が良い政策ばかりだ


2013年には労働法の改正も行われた。

その中で目玉になったのは「5年ルール」だ。これはどういうものなのか。

簡単に言うと、「非正規労働等で5年間働いた者は、本人の届け出があれば、正社員にしろ」というものであった。

これも、一見すると、美しい言葉である。労働者の権利を守るような動きに見える。ところが、この5年ルールも、現場では激しく批判されている。何が悪いのか分からないというのであれば、これも分かりやすく説明しよう。

(1)企業は5年で労働者を放り出す名目ができた。
(2)本人が申し出たら、それを理由にクビにできる。

非正規労働者に「5年働けば正社員になれるかも」と5年間、その立場の悪い状況に縛り付けることができる。

しかし、5年目に入っても「本人の届け出」がなければ、そのまま非正規労働のまま継続させられる。万一「本人の届け出」があれば、「正社員にできないので辞めてくれ」と言えるようになる。

いずれにしても企業に都合が良いものである。

さらに国家は法人税の引き下げも動いている。法人税を引き下げることによって、企業の利益を拡大させて、それによって雇用を増やすことにつながるというのが政府の言い分である。

しかし、2014年4月からは消費税を8%に上げて労働者から金を搾り取っている中で、企業には法人税を引き下げるのだから、まさに企業優先の政策が行われていると言っても過言ではない。

そうするという決意の中で、2014年3月12日から、政府税制調査会が動いている。

これが今、日本の中で起きている動きなのである。日本人の8割はサラリーマンである。こういった動きは、ほぼすべての日本人を直撃すると言ってもいい。

多国籍企業による「日本人の奴隷化」は、今も着々と進行している。

私たちは「一見、美しい言葉」に騙されながら、着々と奴隷化される未来に向かって突き進んでいる。

働いても豊かになれない奴隷化時代に向かって突き進んでいる日本人

2014年4月29日火曜日

ウクライナ

[1551] ウクライナ情勢で皆が知っておくべき真実。
そして私の新しい金融本のお知らせ。
副島隆彦
2014-03-21

副島隆彦です。 今日は、2014年3月21日です。

「 鉄は熱いうちに打て 」と言う格言(マキシム)が有って、いろいろの含意があるのだろうし、歴史的、民族的にいろいろ解釈をするだろう。
私にとっては、この格言は、「自分の金融・経済の本を書く際には、短期間で書く」ということでした。 


 私は、3月6日から丁度、10日間(15日まで)で一冊書き上げました。
出版社の独房のような(窓がない)会議室に籠(こも)って、オペレーターの人と2人で、原稿の打ち込み作業を始めた。

 4日目から、ノドをひどくやられて、持病の気管支炎をこじらせて、
私の場合は、風邪
( かぜであって、感冒になどならない。感冒=インフルーエンザは風邪ではない。病原菌による感染症だ)
になんか負けないぐらい慢性気管支炎で、長年の爛(ただ)れ、腫(は)れで鍛(きた)えあげているので、風邪なんか怖くない。
厳しい環境で生きている動物(人間を含む)は、病気への耐性(たいせい)もものすごい。
だから、ちょっとのことでは発病しない。


 私は気管支炎がひどくて頭痛がヒドいまま、あとの5日間書き続けて、それで仕上げた。
寝ている時間はほんの僅(わす)かだった。
出来た本の名前は、「金融市場 を 操(あやつ)られる 絶望国家・日本」(徳間書店 刊)である。 


 この本は、見本本(みほんぼん)が4月3日に出て、それが著者である私に届いて、本屋に並ぶ発売は4月8日だそうだ。 
即断、即決で、私は生きているから、私のこの最新版の金融・経済本には、株、債券、金(きん)、為替(円・ドル相場)からその他すべての金融問題を扱っている。


 ビットコインのことから、ウクライナ情勢まで、最新の情報と知識を、凝縮した。 
自民党内の政治家たちの動きもあれこれ、微細に書いた。
私、副島隆彦が、たった10日間で書いた本だからといって、きっと粗製乱造(そせいらんぞう)だなどとは決して言わせない。 
私の総合的戦略家(トータル・ストラテジスト)としての頭脳では、金融・経済場面への時間投入は、それぐらいで一冊を仕上げることが出来る。


 だから、この本には、各種の金融統計資料をいつもの通り載せているが、最新の金融数字は、すべて3月13日(水)のものだ。
本当なら、3月末には、書店に並べたかったのだが、出版・書籍流通業界の業界再編の煽(あお)りでうまく行かなかった。
それでもまあ、いいや。 


 この
「(すべての日本の、アメリカもそうだが)金融市場は(今や)政府、国家によって、操られている
市場操作されているのだから、そのことに鋭く気付いて、そのことを肝に銘じて、
逆に、逆に自分の相場を張って、政府の動きの裏を書いて、この統制経済(コントロールド・エコノミー)の時代を生き延びよ」
という本だ。


 本の帯(おび。腰(こし)巻きとも言う)に、「いい加減に皆、気づけ!」と書いた。

 株式投資をやっている人たちは、皆、薄々(うすうす)と気付いているのだ。
それなのに深くは自覚していない。 
今の若者用語で言うなら、「そろそろ気づけよー」である。
そのことを私、副島隆彦は言っている。
気付いているのに自覚がない。 


 政府が、株価を操作して、いいように市場を動かしている。
それと、「日経300」とかの、日経平均の指標(インデックス)取引と、さらにそれに輪をかけて、
大証(だいしょう。大阪証券取引所)を資本で乗っ取った、シカゴマーカンタイル取引所(CME,シーエムイー)の夜間取引の指標取引で、
いいようにその日の株価を引き釣(づ)り回している。
皆、分かっているのに、分かっていない。
そのことを、今度の本一冊丸々で書いた。 乞うご期待、だ。



 4月になったら、消費税の8%への増税で、日本の景気は、相当に悪くなる。
安部首相とブレインの官僚たちは、日本国民に新たに襲い掛かる窮状に、それが国民が果たして耐えられか、自分たちの失政の重大な責任として感じずにはおれないだろう。
責任者たちが責任を取るべきだ。


 私は、この金融・経済本 に取り掛かる日(3月6日)の朝まで、ウクライナ情勢を調べていた。 
それを、ここの重たい掲示板に載せてから、出版社の独房会議室に入りに行こうと思っていた。
が、間に合わなかった。その時に、書き残したものを、以下に載せる。


 あれから2週間が経(た)つが、私が情報を集めて、分析したとおりで、何の変化もない。
「ウクライナでは、先に手を出して、政府を暴力で転覆させた 反政府勢力=今のウクライナの暫定政権 の負けだ。
あのやり方では、西側とりわけヨーロッパ人たちの支持を取り付ける事はできない。
暫定政権には、おかしな、奇っ怪な極右人間たちが入り込んでいる。


だから、全体は、ロシアのプーチンの 「寝技、押さえ込みの一本勝ち」だ。

 プーチンは、柔道やテコンドーのような柔術(空手)の猛者だ。だからこれらの技を知っている。
一旦、引いて、それからジワジワと時間を掛けて、暫定政権の内紛、分裂を待って、それから押さえ込むだろう。
以下が、私が、3月6日に書いた文である。


    * * * * *

副島隆彦です。
今日は、2014年3月6日です。
ウクライナ情勢の最新でもない、昨日のニューズを載せます。


 英FT(フィナンシャル・タイムズ)は、「ロシアを世界が押さえつける」、と 負け惜しみで書くけれども、
私は、今回の ウクライナ問題は、ロシアのプーチンの 寝技の一本勝ちだ、と 判定する。


 プーチンは、ロシア軍をクリミア以外には投入をしないで、一旦、引いた。 
このあともウクライナは、分裂国家、国論分断国家 として ズルズルと続くだろう。
この点では、実は、日本とそっくりだ。 


 回廊(かいろう)国家=コリダ―・ネイション と言って、2つの大きな勢力(帝国)の間で、廊下(ろうか。corridor コリダー)のように外国の軍隊に行進され、
踏みにじられ、居座られるものだから、国内が引き裂かれ分裂する。
このような国家の分裂状態を繰り返す回廊国家 corridor nation が、ポーランドと朝鮮半島だ。


 だが、もしかしたら、私たちの日本も回廊国家になりつつあるのかも知れない。
アメリカと中国という2つの帝国の間で、ウクライナと同じような分裂国家の様相を呈する。


 ロシアもウクライナも、そしてポーランドもベラルーシ(白ロシア)も、本当はスラブ(スレイブ)民族であって、
いくら、ウクライナ人が、自分たちは、Russi ルーシー とは違う、西洋の純系白人だと気取っても(キエフ大公国の伝統)アジア人種との融合問題は消えてなくならない。


 ウクライナ人が自分たちのことを、過度に西洋白人(ヨーロピアン・ホワイト)であって、
モンゴル=キプチャク汗国に屈服したルーシー Russi のロシア人(モスクワ大公国)とは全く違うのだ、と言えば言うほど、 
私たち東アジアの モンゴル系人種である 東洋人に対して失礼である。
ヨーロッパ白人たちは、ウクライナを助ける力はない。


 ウクライナ人は、自分が腹の底から分かっているとおり、
「ロシアとの兄弟民族として生きてゆく」のが一番、仕合わせなのだ。
自分を純系白人だと言って、そのことを鼻にかける人間を、私は軽蔑するし不愉快である。


 この問題は、カフカス地方の、グルジアが始めた南オセチア侵攻とロシア軍の反撃による失敗( 2008年8月)と同じ感じだ。
旧ユーゴのセルビア、ボスニアの問題とも同じだ。
ヨーロッパ諸国の NATO(ネイトー)軍も アメリカ政府も どうせ軍隊を出動させない。そういう資金もない。


 だからプーチンの勝ちだ。
どうせ元々が、旧ロシア、旧ソビエトの領域( リージョン、region)の話だ。 
勝手に、ヨーロッパ白人文明地域(リージョン)を外側に広げようとしても、うまくゆかない。
本当の本当は、ロシア人も、ウクライナ人も、モンゴル帝国の一部だったのであり、「タタールの軛(くびき、頸木)」に長く支配された国々である。


 このことでは、世界史(=人類史)の大きな歴史学に拠(よ)っている 岡田英弘(おかだひでひろ)教授と奥さまで後継者の宮脇淳子(みやわきじゅんこ)女史の研究が、世界基準でありずば抜けて優れている。

事態の推移を最新の新聞記事で確認しておく。


(転載貼り付け始め)


●「米国 ケリー国務長官のウクライナ訪問…事態打開を模索 」

毎日新聞  2014年3月4日(火)  キエフ

 緊迫するウクライナ情勢を受け、オバマ米大統領は3日午後、ロシアが南部クリミア半島で軍事活動を停止しない場合、
「ロシアを孤立させ、経済に打撃を与えるあらゆる経済的、外交的措置を検討する」と明言し、対露交流政策の凍結に踏み切った。


 ケリー米国務長官が4日にウクライナに到着、新政権首脳と土壇場の打開策を模索するが、ロシア側との歩み寄りが実現するのか不透明な情勢だ。

 オバマ大統領は「ロシアが世界中から強い非難を受けていることは、ロシアが歴史の誤った側にいることを示している」と批判。
ロシア側がクリミア半島のロシア系住民の保護を介入の理由としていることについて、全欧安保協力機構(OSCE)や国連が参加した「連絡グループ」を通じた監視団の派遣案などの受け入れを呼びかけた。


 米政府は3月3日、ロシア南部ソチで7日に開幕するパラリンピックへ政府代表団を派遣しない方針を決定。
国防総省もロシア軍との間の共同訓練や2国間協議、寄港など軍同士の交流を中断した。
通商代表部(USTR)も、ロシアとの貿易や投資に関する協議を中断する方針を決めた。


 欧州連合(EU)も対応を急いでおり、アシュトン外務・安全保障政策上級代表(外相)は4日、マドリードでラブロフ露外相と会談する。
EUは緊急首脳会議を招集する6日までに、ロシアが事態を沈静化させる措置を取らない場合、ビザ自由化交渉を見直す方針を固めた。北大西洋条約機構(NATO)も3月4日、理事会を開催、軍事的警告を打ち出すべきか協議した。


 クリミア半島の状況について、ウクライナのセルゲーエフ国連大使は、ロシア軍部隊が2月下旬以来、1万6000人の兵を投入していると指摘。
戦闘は起きていない模様だが、AP通信はウクライナの軍施設を包囲したロシア部隊が威嚇射撃をしていると報じるなど、衝突の危機が残されている。
ロシア大統領府によると、プーチン露大統領は3月4日、ロシア西部のウクライナ国境付近で実施していた軍事演習から、部隊の撤収を命じた。


 ウクライナ新政権のヤツェニュク首相は「クリミア自治共和国は、昔も今も将来もウクライナ領だ」と「クリミア死守」の意向を強調。
ケリー長官との会談では「ウクライナの主権、独立、領土保全」を確認し、支援を求める見通し。
また数日中にEU本部のあるブリュッセルを訪れ、EU側とも対応策を協議する。


(転載貼り付け終わり)



副島隆彦です。
私がネットでウクライナ情勢を調べていたら、以下の、櫻井春彦(さくらいはるひこ)という人物の文章が一番、しっかりしていて大変、勉強になった。


 この人は、1955年生まれ(58歳)で、 早稲田大学理工学部卒業で、何を職業にしているか分からないが、以下の2冊の本を書いている。 
世界各国の情報機関(国家スパイ組織)のことにものすごく詳しい人だ。
書いていることは緻密で正確である。
私、副島隆彦もビックリするほどの、ものすごい反米左翼 である。  


桜井 春彦の著書 

1.「 テロ帝国アメリカは21世紀に耐えられない ― アメリカによるテロの歴史」 桜井 春彦著  (2005年9月刊 、・・・社) 

2.「 アメリカ帝国はイランで墓穴を掘る 」( 櫻井春彦著、洋泉社、 2007年3月刊) 

の2冊だ。私は、この人の「櫻井ジャーナル」のブログを読んで、こういう人が日本にも居るんだなあ、と感動した。 



(転載貼り付け始め)

http://plaza.rakuten.co.jp/condor33/diary/201402160000/
 櫻井ジャーナル 

2014.02.16 

 「 米国のヌランド米国務次官補は、ウクライナで50億ドルを扇動に使った
  と公言、その手先はネオ・ナチ 」
 
 アメリカの親イスラエル派、一般に「ネオコン」と呼ばれている勢力はウクライナでも体制を乗っ取ろうとしているわけだが、
その手先として最前線で活動中のビクトリア・ヌランド国務次官補は、
昨年12月13日、工作資金として50億ドルを投入していることを明らかにしている。
ウクライナの体制を転覆させるために50億ドル、ざっと5000億円を使っていると公言しているのだ


 ジョン・マケイン上院議員と同じように、ヌランドはウクライナで公然と反ロシア勢力を支援してきた。
こうした工作の担当として国務次官補に任命されたとも言える。
何しろ彼女が結婚した相手はネオコンの大物ロバート・ケーガンだ。


 このヌランドがジェオフリー・パイアット駐ウクライナ大使と電話で話し合っている内容が今月、YouTubeで明らかにされた。
その中でヌランドの口から 「EUなんかくそくらえ(Fuck the EU)」 という下品な言葉が飛び出し、話題になったが、問題は別のところにある。
ウクライナの閣僚をどうするか検討していたのだ。


 また、「オランダのロバート・セリー元駐ウクライナ大使が、国連特使としてキエフへ派遣されるとジェフリー・フェルトマン国連事務次長から聞いた」ともヌランドは話している。 
その決定をヌランドは歓迎、そして 「EUなんかくそくらえ」という表現が出てくるわけだ。
EUより国連の方がネオコンの意向に沿った動きをしているということなのだろう。
確かに、シリアなどでもそうだった。


 また、欧州対外行動庁(EEAS)のヘルガ・シュミット事務次長と駐ウクライナEU大使のヤン・トムビンスキーとの会話もアップロードされ、
その中でシュミット事務次長は
「アメリカからEUの対応が生ぬるいと言われている」ことを明らかにしている。


 EU を「生ぬるい」と批判しているネオコンが何をしているかというと、ファシストを使った暴力行為だ。 
ネオ・ナチの「スボボダ(全ウクライナ連合『自由』)」は反政府行動で棍棒、ナイフ、火焔瓶を手にし、ブルドーザーを持ち出してウクライナ政府を挑発、警官隊と衝突してきた。
抗議行動を撮影した映像や写真の中に3本指の旗を見つけたなら、それはスボボダのものだ。
ちなみにスボボダの旧党名は「ウクライナ社会ナショナル党」であり、かつてのドイツのナチは「ナショナル社会主義党」だ。


 ウクライナのナショナリストは、OUN(オウ・ユー・エヌ)という団体の流れをくんでいる。
この団体は1929年に創設され、イギリスの対外情報機関MI6(エム・アイ・シックス)と結びついた後、
1938年頃に、今度はナチと手を組み、
1941年にドイツ軍がウクライナを占領すると「新秩序」の障害になると考えられていた人々、つまりユダヤ人、ロシア人、知識人、コミュニストなどの虐殺していった。
このときにOUNは勝手にウクライナの独立を宣言、ドイツとの関係が悪化するが、
1944年にソ連軍と戦うため、ドイツ軍へ合流している。


 戦後、OUN の幹部は再びMI6と結びつく。
OUNのリーダーだったステファン・バンデラが、1948年にMI6に雇われている。
が、その2年前、1946年にバンデラの側近だったヤロスラフ・ステツコが MI6 のエージェントになり、ABN(反ボルシェビキ国家連合)の議長に就任している。
この団体は1966年にAPACL(アジア人民反共連盟/後のアジア太平洋反共連盟)と合体し、WACL(世界反共連盟)になった。


 反政府行動ではスボボダのほか、アフガニスタン、チェチェン、グルジアといったカフカス地方での戦闘を経験したグループも参加しているようだ。
そうした中にはシリアで反政府軍に加わっていた人々もいるようだ。
今年1月、シリアからウクライナへ約350名が入ったという情報があり、
ソチ・オリンピック期間中に何らかの動きがあるのではないかと考えている人もいる。 




2014.3.3  櫻井ジャーナル


 「2月中旬には米政府も露政府と協力し、話し合いで解決する意向だった
  が、ネオコンが暴力で妨害」 

 反政府派と停戦で合意したとビクトル・ヤヌコビッチ大統領が発表したのは2月19日のことだ。
流血を終わらせ、国に安定をもたらすための話し合いを始めるという内容だったようだ。


 だが、その直後にネオ・ナチ、つまり「スボボダ」や「UNA-UNSO」などのメンバーが破壊活動を活発化、
石や火炎瓶を投げるだけでなく、ピストルやライフルを撃ち始めて死傷者が急増、合意を実行に移すことは困難な状況になった。


 2月21日の合意が成立した段階では、アメリカのバラク・オバマ大統領は、ロシアのウラジミール・プーチン大統領と同じように外交的な解決を目指すつもりだったようだ。
だが、こうした方針を「ソフト」だと考えていたのがビクトリア・ヌランド国務次官補だ。


 ジェオフリー・パイアット駐ウクライナ米国大使と次期政権の閣僚人事を話し合っている際、
ヌランドは、EUが事態を外交的に解決しようとしていることに怒り、
「EUなんかくそくらえ( Fuck the EU )」という言葉を口にしたわけである。


 暴力行為のエスカレートは、外交的な解決を破綻させる有効な手段だった。
「西側」のメディアは「平和的な市民」を「凶暴な警察隊」が弾圧したというストーリーで報道していた。
だが、実際は、棍棒やナイフで武装した反ヤヌコビッチ派が石や火炎瓶を投げ、ピストルやライフルを撃ち始めて血と火の海になったのである。
ウクライナの警官隊は、アメリカや日本に比べておとなしかった。


 話し合いでウクライナの問題を解決させたくないため、
ネオコンはネオ・ナチに暴力のエスカレートを求めたのだろう。
そのためにネオ・ナチの立場は強くなり、暫定ファシスト政権で多くの主要ポスト、特に治安関係を手に入れることにつながったと見ることができる。
ネオコンは状況を格段に悪化させた。


 ウクライナのネオ・ナチは単に暴力的だということに止まらない。
2004年からウクライナのファシストはバルト諸国にいくつもあるNATOをスポンサーとする施設で軍事訓練を受けている。


 だが、それだけでなく、チェチェンでロシア軍と戦い、その残虐さで名前を知られるようになったアレキサンダー・ムージチコ(別名サーシャ・ビリー)のような人物、
あるいはシリアからウクライナ入りした約350名の戦闘員もいる。


 リビアやシリアでも戦闘が本格化する際、正体不明の狙撃手が反政府派と治安部隊、両方に向かって銃撃している。
ウクライナでも同じことがあったと言われている。
リビアやシリアでは狙撃が事態悪化の引き金になっているわけで、ウクライナ政府が反政府派と話し合いを進めている段階で狙撃するメリットはない。


 ウクライナのネオ・ナチは軍事訓練を受けていたり、実戦の経験のあるメンバーがいるほか、シリアから入った戦闘員もいるのだが、
UNA-UNSO のメンバーがやったと言う人もいる。
UNA-UNSO は、ウクライナ政府の反腐敗委員会委員長や青少年スポーツ相にメンバーが就任しているネオ・ナチ団体だ。


 私(櫻井春彦)はこれまでに何度も書いていることだが、ウクライナのナショナリストは歴史的にアメリカやイギリスの情報機関、そしてナチとの関係が深い。

 戦後、アメリカはCIAの外部にOPC(オウ・ピー・シー)という破壊活動(テロ)機関を設置、
後にCIAへ潜り込んで計画局(後に作戦局へ名称変更)の母体になったのだが、
この機関はファシストのほか、マフィアやイスラム教スンニ派の武装集団(アル・カイダ)を手下として使っている。


 OPCの元になったのは、第2次世界大戦でイギリスの秘密機関で心理戦、暗殺、破壊活動を担当していたSOE(エス・オウ・イー)と、
アメリカの戦時情報機関OSS(オウ・エス・エス これが後にCIAになった。引用者注)が、共同で設立したゲリラ戦部隊のジェドバラだ。


 シェドバラは戦後も活動を秘密裏に継続した。
1949年にNATO(北大西洋条約機構。ヨーロッパ軍)が創設されるとその内部に秘密部隊が設置されるが、そのベースもジェドバラだ。


 ジャーナリストのフィリップ・ウィランらによると、NATOへ加盟するには、その国は秘密の反共議定書(はんきょうぎていしょ)に署名する必要があり、
「右翼過激派を守る」ことを義務づけていると言われている。


 こうした秘密機関の存在が公的に認められたのは1990年10月のことだ。
イタリアのジュリオ・アンドレオッチ首相が「いわゆるパラレルSID - グラディオ作戦」という報告書を発表したのだ。
より正確に言うならば、発表せざるを得ないところまで追い詰められたのである。
(詳しくは拙著『テロ帝国アメリカは21世紀に耐えられない』を参照。)


 この報告書のタイトルにもなっているが、イタリアでは秘密部隊を「グラディオ」と呼ぶ。
「極左」を装って爆弾攻撃を繰り返し、左翼攻撃の環境を作り上げた「緊張戦略」の一環だった。
他の国では名称が違い、例えばデンマークはアブサロン、ノルウェーは ROC、ベルギーは SDRA8 。
ジョン・F・ケネディ米大統領暗殺やシャルル・ド・ゴール仏大統領暗殺未遂でもこの組織の名前が出てきた。
ウクライナのネオ・ナチが、バルト諸国にあるこれらの施設で軍事訓練を受けている背景はここにある。


(転載貼り付け終わり)



副島隆彦です。
このように櫻井春彦氏が書いている。
これだけの重厚な文を、自分の知能と思考力を使って、さらさらとネットの文章で読んで、全体をしっかりと理解することが出来るだけの頭(思考力)出来る人はそれほどいない。


 だから、私、副島隆彦が、こういう生来、頭のいい緻密な文章を書く人の文を、何とか普通の読書人階級の優れた感受性をした人々に分かりやすく、“負焼(ふや)かして ”、易(やさ)しく書き直して伝えるのである。 

 生来、頭の緻密な人間たちというのも困った人たちだ。
情報をギューギュー詰めにするものだから、まわりの人たちが困ってしまう。


 ここで、櫻井春彦氏は、優れたジャーナリストたちの間では、世界的に認められている事実として、

 「・・・アメリカの親イスラエル派=ネオコンの・・・・手先として最前線で活動中のビクトリア・ヌランド国務次官補(アシスタント・フォー・ステイト・セクレタリー)は、
昨年12月13日、工作資金として50億ドルを投入していることを明らかにしている。
ウクライナの体制を転覆させるために(アメリカ政府は、すでに)50億ドル、ざっと5000億円を使っている・・・」 
と書いている。


 そして、実際に転覆させた。
このヌーランド女史というアメリカのれっきとした現職の、政府高官は、今も、米政府内にいる。オバマ大統領や、直接の上司である、ジョン・ケリー国務長官によって、辞めさせられたという話は、ない。 
オバマや、ケリーでも手が出せないのだ。 
つまり、アメリカのワシントンの政治の世界もまた、大きくふたつに割れて、そのままいがみ合いながら闘いを続けているということだ。


 オバマたちはハト派である。立派である。
なるべく軍事紛争、外国への軍事侵攻をしたくない。
それに対して、ヒラリーや、ジョン・、マケインを頭にお仕立てて、アメリカの凶暴な対外政策の継続を実施しようとする連中が、こうして、公然とアメリカ政府の外交政策の中枢にいるのである。 


 このビクトリア・ヌーランドという高官の女は、ワシントンの政界では、ムーニー Moonie = 統一教会 Unification Church の信者だと公然と噂されている人だ。 
その夫が、ロバート・ケーガンというネオコン派で、今も現職の政治助言者(政府審議会の委員クラス)でワシントンで動き回っている元高官だ。
だから、その 奥さんが、この ヌーランド 米国務次官補 である。


 こういう人たちの恐ろしい動きが公然と、世界のメディアでは記事になっている。
彼女らが、今のネオ・ナチで人種差別主義者であり
( 日本で言えば、嫌韓論、悪韓=あくかん=論や、反中国、を書いて、喚(わめ)いている人たちと同類だ)、
今のウクライナの暫定政権のトップたちになっており、
そしてカア彼らを背後から褻(け)しかけて、資金を与えて、動かしているアメリカ人たちだ。 


 こういう事実を、NHK を含めた、日本の体制側の主流派のメディアは一切、流さない。
だから日本国民は、盲(めくら)、聾(つんぼ)、唖(おし)にされたままだ。


櫻井氏は、次のように書いている。

 「・・・このヌランドが ジェオフリー・パイアット駐ウクライナ大使
( 副島隆彦注記。ヌーランド女史の同志で、ウクライナ政府を暴力的に倒した黒幕である米大使、その人)
と電話で話し合っている内容が今月、YouTubeで明らかにされた。

その中でヌランドの口から 
「EUなんかくそくらえ(Fuck the EU)」 という下品な言葉が飛び出し、話題になった」 である。
この ユーチューブを見た日本人の世界情報追っかけ人間の、インテリさんたちは多い。 



"Fuck the EU! - Exactly!" - Victoria Nuland & Geoffrey Pyatt
(※"Fuck the EU!"の台詞は、0:37の時点で出てきます。動画の下部の、右から4番目の四角いアイコンをクリックすると、英語字幕が表示されます。)

 このビクトリア・ヌーランドの夫の、ロバート・ケーガンの本は、翻訳が出ている。
それは、『 アメリカが作り上げた“素晴らしき”今の世界 』(ビジネス社、2012年2月刊、古村治彦 訳) である。 
なんと、この本は、私、副島隆彦が監訳者として、その本の帯に、「ネオコンは世界支配を諦(あきら)めない」と打ち込んである。 
「 オバマ政権にケーガンは、強い影響力を持つ。最新の米外の戦略論文!!」となっている。
本当になあ、こういうことなのですよ。


 さらに櫻井氏は、 
「・・・ ウクライナのネオ・ナチ (副島隆彦注記。現在のウクライナの暫定政権の主要な人間たち)は、単に暴力的だということに止まらない。
2004年からウクライナのファシストはバルト諸国にいくつもあるNATO(副島隆彦注記。アメリカが音頭を取って作った、集団的安全保障のヨーロッパ軍 )をスポンサーとする施設で軍事訓練を受けている。」


 「 だが、それだけでなく、チェチェンでロシア軍と戦い、その残虐さで名前を知られるようになったアレキサンダー・ムージチコ(別名サーシャ・ビリー)のような人物、あるいはシリアからウクライナ入りした約350名の戦闘員もいる。
リビアやシリアでも戦闘が本格化する際、正体不明の狙撃手が反政府派と治安部隊、両方に向かって銃撃している」


 副島隆彦です。 
こういうことを書いていると、本当に頭が疲れる。
あまりに重たい情報が、ごろごろと転がり、そして数珠つなぎで一斉にやってくる。 
ですから、頭を休み休みしながらでないと、こういう 世界政治情報の優れた文を読み進めてゆくことは普通の人には、出来ないだろう。
私、副島隆彦の脳(頭。思考力)でもなかなか大変だ。


 今度の2月21日、22日の、ウクライナの政変劇でも、実際には、
「・・・正体不明の狙撃手たちが、反政府派と治安部隊、両方に向かって銃撃している」
が起きていることがはっきりした。 
追放されたヤヌコビッチ大統領を守っていた警官隊と、それを素手の平和的な抗議行動だけで活動していた反政府勢力の 人々の 両方を、奇っ怪な、危険な集団が、その両方を、狙撃してたくさん(おそらく200名ぐらい)殺している。 


 この者たちが、どういう人殺し集団であるかを、日本にいる私たちも、本気で、明日は我が身、として真剣に考えた方がいい。 
日本でも全く同じことが起きるのだと、考えることが最もずぐれた知性と頭脳の持ち主ということになる。 
政治の世界は、本当に恐ろしいです。
素人さんが近寄ると、本当に撃ち殺されます。あるいは罠(わな)に引っ掛かります。


 ウクライナの国会議事堂の前に、あちこち、たくさんお花が飾ってあって、
死んだ(殺された)者たちに、ウクライナのキエフの市民たちが、しょんぼりと追悼の祈りを捧げている映像なら、日本のニューズでもチラチラと、数秒間とか流れた。


 ウクライナ国民なら、皆、噂が広がって真実を知っている。
しかし、本当の人殺しの、政治的な凶悪犯たちが、今、国民議会と暫定政権を支配しているのだから、怖くて滅多なことは口外出来ない。 
そして、世界のメディアは、ロシアを非難することの一色だ。
政治家たちを始め、皆、大きな真実を知っているくせに、よく、言うよ、だ。 
インテリ層のヨーロッパ人たちは、これらの真実を知ったので、EUの緊急閣僚会議でも、本当は、そんなに立派な感じの、ロシア批判など出来ない。
出来るわけがない。


 自分たち白人優越主義者の方の、その
「白人(キリスト教徒)文明を押し広げよう」という態度が、問題なのだ。


ヨーロッパ人は、今は、みんな、しょんぼりしているのが一番、いい。
アメリカ人は、穏やかで、しっかりしたオバマたちを政権(執行部)を置いているので、まだ大丈夫なのだ。
が、如何せん、ヒラリーを先頭にして、凶暴な、おかしな連中を、ワシントンの政界、財界、官界にたくさん巣食わせているから、
この者たちを、何とかしないことには、やっぱり彼らを暴走させて、それで第三次世界大戦だ。


 たいした知能もないくせに、「自分に考えは正しい。自分は頭がいい」などど、勝手に自惚(うぬぼ)れていると、
いいように騙(だま)されて操(あや)られて、時代(じだい)の中で、こき使われます。
そうやって民衆は、戦争に参加させられ、自ら戦場に行き、ひどい目にあったのだ。
それが人類の歴史だ。 
今、反原発運動をやっているような人々の中に、へんなのがたくさん潜り込んでいますから、本当に気をつけて下さい。 
私、副島隆彦は、それらのすべてを見抜くことの専門家です。
もっと言えば、超(ちょう)専門家です。


 私、副島隆彦の 目の黒いうちは、すべての動きを見抜きます。
ですから、私、副島隆彦と学問道場への皆さんからの信頼が、貴重であり、重要です。


 最後の最後は、何を信じ、誰を信頼するか、だ。 

 むずかしい政治の事件の新聞記事や 解説文を、読むだけで頭が痛くなる人がたくんさんいます。
その方がまともです。
自分に正直に。自分の肌合いの、実感で分かることだけを。
自分には、ここまでは分かった、と言うこと。
常に疑うこと、いや待てよ、そうではないのではないか、とためらい、注意深く、用心深く、警戒しながら行動すること。
それ以上は私は分からない、と言うこと。
難しそうなことを分かったふりをしないこと。
自分にはそれ以上は、分からない、と、 そのように自分のまわりにも言うこと。
この正直な生き方の態度さえあれば、大丈夫でしょう。 ・・・


副島隆彦です。
以上が、3月6日に書いて、そのままほったらかした文です。

田中宇の記事

(転載貼り付け始め)

田中宇の国際ニュース解説  無料版  2014年3月9日 http://tanakanews.com/

●最近の田中宇プラス(購読料は半年3000円)
危うい米国のウクライナ地政学火遊び http://tanakanews.com/140305ukraine.php

「 プーチンを強め、米国を弱めるウクライナ騒動 」

この記事は「危うい米国のウクライナ地政学火遊び」(田中宇プラス)の続きです。
http://tanakanews.com/140305ukraine.php

 EUの上層部で、ウクライナ新政権に対する懐疑の念が強まっている。
2月22日の政権転覆によってできたウクライナ新政権は、前回の記事に書いたように、
ネオナチ・極右の指導者が安保、軍事、警察、教育などの政策決定権を握っている。


 政権転覆の直前、極右を含む反露の反政府勢力が、親露的なヤヌコビッチ政権を倒そうと、首都キエフ中心街の広場などに集まって反政府集会を続けていた時、何者かがビルの上から集会参加者や警察官を狙撃して、多数の死者が出た。
この時、反政府勢力は、ヤヌコビッチ配下の兵士が狙撃犯だと非難する一方、ヤヌコビッチ政権は、反政府勢力の者が狙撃犯だと反撃した。


 米欧マスコミの中には、ヤヌコビッチ政権による弾圧を大々的に報じ、狙撃もその一環であるかのような印象が醸し出された。
しかし政権転覆後の今になって、狙撃が反政府勢力、つまり新政権の自作自演だった可能性が高まっている。


http://edition.cnn.com/2014/03/05/world/europe/ukraine-leaked-audio-recording/
Leaked call raises questions about who was behind sniper attacks in Ukraine

 政権転覆直後、EU加盟国であるエストニアのパエト外相がキエフを緊急訪問し、知ったことや印象について2月26日にEUのアシュトン外相と電話会談した。
その電話を録音した内容が最近、インターネットのユーチューブに漏洩した。


この中でパエト外相は、問題の狙撃について、政権転覆前に反政府勢力(つまり新政権)が負傷者や急病人のために中心街の広場に作った野戦病院(テント)の主任医師から聞いた話として、
状況証拠から見て、ヤヌコビッチ前政権でなく、新政権が狙撃犯を雇っていた可能性が高いと話している。
電話の相方であるEUのアシュトンは、初耳だと答えた。


http://www.youtube.com/watch?feature=player_embedded&v=ZEgJ0oo3OA8
Full leaked recording

 パエトは、新政権が狙撃事件の真相について捜査したがっていないとも指摘した。
新政権を率いる極右指導者は過去に暗い過去があるので多くのウクライナ人が彼らを信用していない、とも語っている。


 エストニア外務省は、漏洩した録音が本物であることを認めつつ、
パエトはキエフで聞いてきたことをアシュトンに報告しただけでウクライナ新政権を批判するつもりはない、
と苦しい釈明をした。


実際には、アシュトンがパエトにキエフ訪問の印象を尋ね、その答えとしてパエトが新政権に関する悪評を並べており、
漏洩後の釈明と裏腹に、パエト自身が新政権に対して悪い印象を持っていることが明白だ。


http://www.zerohedge.com/news/2014-03-05/behind-kiev-snipers-it-was-somebody-new-coaltion-stunning-new-leak-reveals-truth
"Behind The Kiev Snipers It Was Somebody From The New Coalition" - A Stunning New Leak Released

http://www.dailymail.co.uk/news/article-2573923/Estonian-Foreign-Ministry-confirms-authenticity-leaked-phone-call-discussing-Kiev-snipers-shot-protesters-possibly-hired-Ukraines-new-leaders.html
Estonian Foreign Ministry confirms authenticity of leaked phone call discussing how Kiev snipers who shot protesters were possibly hired by Ukraine's new leaders

 エストニアはウクライナと同様、ロシアの隣にある小国で、1940年から91年までソ連に併合され、厳しく支配された。
ソ連崩壊でようやく独立し、EUに入ったエストニアの人々(国民の3割を占めるロシア系以外)の多くは、ロシアの覇権や威圧が大嫌いだ。


 それを考えると、ウクライナ新政権が反露的であるにもかかわらず、エストニアの外相が新政権に悪い印象を語っているのは、深い意味を持つ。
パエト外相は、親露・反露という尺度を超えて、ウクライナ新政権がロシアと敵対するために混乱や暴力を扇動して、自国周辺の東欧ロシアの広域が不安定化することの方を懸念しているのだろう。


http://news.antiwar.com/2014/03/05/ukraine-protest-leaders-hired-kiev-snipers/
Ukraine Protest Leaders Hired Kiev Snipers

 前回の記事に書いたとおり、
2月初めには、米政府がウクライナの政権転覆を支援し、新政権の首脳人事に介入していることが
米国の国務次官補と、駐ウクライナ大使との電話会談のユーチューブへの漏洩で暴露されている。


そして今回、米国が作ったウクライナ新政権の極右性や過激さをEUが懸念していることも、ユーチューブによって暴露した。
米国製のシステムであるユーチューブによって、米国の覇権が揺るがされている点が興味深い。


http://www.youtube.com/watch?annotation_id=annotation_2612647377
Victoria Nuland phoning with Geoffrey Pyatt

 ウクライナ新政権が、狙撃者を雇って自分たちの仲間を自作自演的に狙撃させ、
それをヤヌコビッチ政権のせいにして政権転覆を成功させようとしていたとなれば、新政権の国際信用は急落する。


 ウクライナ新政権は「テロリスト」ですらある。
ウクライナを政権転覆した極右勢力の指導者であるドミトリイ・ヤロシ(Dmitryo Yarosh)は最近、何度もロシアで爆弾テロを行ってきたチェチェン人のテロリスト(Doku Umarov)を支援し、どんどんロシアでテロをやってもらおうと、極右のネットメディアのサイトに書いて提案している。
ヤロシはその後、5月の大統領選挙への立候補を表明した。


http://news.antiwar.com/2014/03/02/report-ukraines-right-sector-leader-urges-terror-attacks-on-russia/
Report: Ukraine's Right Sector Leader Urges Terror Attacks on Russia

http://www.ibtimes.co.uk/ukraines-neo-fascist-right-sector-leader-dmytro-yarosh-run-president-1439324
Ukraine's Neo-Fascist Right Sector Leader Dmytro Yarosh to Run for President

 米国のネオコンは、以前からウクライナの反露極右だけでなく、チェチェンの反露テロリストを支援し、チェチェン人の対露テロはテロでなくロシアの支配に対する抵抗運動だ、と正当化してきた。

その点で、ネオコンに支持されたウクライナの極右がチェチェン人の反露テロを支持するのは当然といえるが、
この支持表明はロシア政府に「ウクライナ新政権はテロリストだ」と非難する正当性を与えてしまい、国際政治的にウクライナ新政権自身を不利にしている。
露政府は、発言者のヤロシを、テロを公然と支持するテロリストとして逮捕
すべく、国際指名手配した。

http://rt.com/news/yarosh-interpol-wanted-terrorism-954/
Russia puts Ukraine far-right leader on international wanted list over calls for terrorism

(転載貼り付け終わり)


副島隆彦です。 
ああ、ここまで読んで、疲れた。 
田中宇(たなかさかい)氏だから、宇宙の宇(う)で、宇(ウ)ータンともネット世界では呼ばれているのだが、彼が、書いて報告してくれることは、大量だから、英文記事まですべて読もうとすると本当に大変だ。
世界中に流れているこれらの新聞記事は、しっかりした根拠があり、出典が明示してある。


もう、いくらなんでも私も疲れました。これぐらいにしましょう。
ウクライナ人も大変だね―。 


副島隆彦拝

楽天の「英語公用語化」は、ヤバいです

■ 英語公用語化によるメリット

 ――楽天は2010年の初夏から社内での英語公用語化を進めてきました。当初、かなり批判もありましたが、現時点での自己評価は? 

 (笑)批判ありましたね。なんで批判されるのか、それがわからないですね。一企業がやることはほっといてくれればいいんじゃない。

 ――今、どうですか。振り返ってみて。

 いや、もうこれは、ヤバイですね。

 ――どうヤバイですか? 

 いや、もうこれがなかったら、たぶん今の地位にはいないと思います。売り上げもどんどん伸びていますし、国際的なプレゼンスも上がってきていますし、入社する社員のクオリティも非常に上がってきています。社員の視野もまったく変わってきている。

 いくつか事例を挙げると、ひとつ目はエンジニアの採用。現在、日本のエンジニアの採用の70%は外国人です。彼らは日本語をまったく話しません。だから新入社員説明会というと、昔は外国人が数人いるという感じでしたが、今は「日本人いたの? 」という感じになってきました。

 インターネット企業は技術がいちばん重要です。ただ、日本でコンピュータサイエンスを専攻している卒業生は、だいたい年間2万人しかいません。それに対し、アメリカは約6万人、中国は100万人、インドは200万人いるんですよ。だから何百万人のプールから人を雇うのか、それとも2万人のプールから雇うのかによって、競争優位が全然変わってきます。

 2つ目の事例として、日本で築いてきたビジネスのノウハウを、海外に浸透させていく流れが出てきました。今までは「日本」と「国際」の2つに担当を分けていましたが、今年からこれを一緒にしました。つまり日本の楽天市場のトップが、海外のeコマースについても責任を持つわけです。

 これはけっこう画期的なことで、彼らは日本で培ったノウハウを、全部、海外に移植しようとするわけです。僕らは日本でゼロからビジネスを立ち上げて、もうすぐ流通総額が2兆円を突破しますが、そこまでに至るプロセスを全部わかっているのです。あのときはこういうふうにするべきだ、とか。

 今度、日本で成功している営業のトップやマーケティングのトップが現地に入ります。この人たちは2年前、3年前は英語をまったく話せなかったのですが、今はもうひとりで行って、向こうのクライアントと普通に話ができる状態になっています。ですから、経営の考え方も、やり方も、社員の意識も大きく変わってきたということです。

 ――日本のネット企業は、海外から輸入してきて、それを日本にアレンジすることが多かったですが、今後は日本で培ったノウハウや経験が、海外で生かせるようになるわけですね。

 われわれはずっとeコマースをやってきているので、ノウハウがあるわけです。今までは「日本」と「国際」に分かれていたのを、一緒にすることによって、システムのコストも下がるし、マーケティングなどのノウハウも共通化できるので、まったくエコノミクスが変わってくる。そして、海外のサービスのレベルもどんどん上がってくる。こうした効果がかなり出てきています。

 ――英語公用語化に踏み切ったときは、「英語は単なる手段じゃないか、そんなのは本質的ではない」という批判もありましたが、英語化によって、ゲームの戦い方が根本から変わった、と。

 もうまったく変わりましたね。もうこれなしでは考えられないですね、本当に。だから、英語化していなかったら、ViberやVikiやKoboの買収も無理だったと思います。「彼らをマネジメントできない」ということになりかねませんから。それから相手側も、そういう会社に売ろうとは思わないけど、「まあ楽天だったらいいかな」というふうに思うということですよね。

 ――最近、ハーバードやスタンフォードといった大学からの採用も増えていると聞きました。

 そうですね。ハーバード、イェール、スタンフォード。もともと少ないので、社内で20人も30人もいかないですが、けっこう入ってきています。

 ――三木谷さん自らシリコンバレーに出向くことも多い? 

 半分ローカルみたいな感じで、シリコンバレーの起業家らと交流して、家に呼んだりバーベキューをやったりという感じですね。だからまあ、本当に名だたるIT企業の社長と、そのへんの喫茶店でお茶飲んだりすることができるようになってきました。


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東洋経済オンライン より
http://toyokeizai.net/articles/-/8423

英語を社内公用語にしてはいけない3つの理由 津田幸男著

2010年、楽天とファーストリテイリング(以下、ファストリ)が英語を社内公用語にすると宣言し、各所で賛否両論を呼んだ。
筑波大学大学院教授である著者も、このニュースに衝撃を受けた者の一人である。
英語支配論や言語政策、国際コミュニケーション論を専門とする著者はこの発表に危機感を抱き、両社の社長へ抗議の手紙を送った。
本書は、実際に送った手紙の全文掲載から始まる。その中で、「英語の社内公用語化」の弊害について著者が問題視しているのは主に3点。
この3点の理由を明らかにしていく構成で丁寧に論が展開されていくので読みやすい。
まず1つ目めは、「日本語・日本文化の軽視」の問題だ。
現在の日本には「英語信仰」が広がっており、その結果「英語偏重社会」が生まれ、日本語や日本文化の軽視が起きていると指摘している。
確かに、昨今の日本人の英語への傾倒ぶりは顕著だ。昇進の基準としてTOEICなどの結果を重視する企業が増えている。
新卒採用においても海外留学生や外国人の採用は年々増加しており、
最近では武田薬品工業が13年度卒の新卒採用からTOEIC730点以上の取得を義務づけた。
英語教育も過熱気味だ。
文部科学省は02年から「英語が使える日本人」の育成政策を打ち出している。
現に英語能力試験の結果を単位取得や卒業要件にする大学が増加しており、
11年の4月からは公立小学校でも英語が正式科目としてスタートした。
著者はこの英語偏重の流れが日本語の衰退を招くと憂う。
特に幼少期からの英語教育は、日本語よりも英語を使うことを子どもたちに奨励するようなものであり、
最終的には次世代が日本語を軽視して捨ててしまうこともありうるからだ。
ロシア語教育が進み、母国語が消滅の危機にあるウデヘ族のエピソードはその危険性を大いに物語っている。
著者は母語である日本語の行く末を案じているからこそ、英語偏重を助長する「英語の社内公用語化」に猛反対しているのだ。
「ユニクロや楽天のような企業は『英語信仰』に取り憑かれているので『英語社内公用語化』という『英語偏重』政策を打ち出したのです。まさに『日本語軽視』」
と憤る。
特に『週刊東洋経済』10年6月19日号の楽天会長兼社長・三木谷浩史氏のインタビューを引用した“三木谷批判”は痛烈。
三木谷氏のことを「英語信仰→英語偏重→日本語軽視」の思考プロセスを文字どおり実行している人物と評し、
人格形成よりも競争を強調する彼の英語教育論は、
“経済至上主義の思い上がった考え方”と非難している。
さらに「英語の社内公用語化」が一般的になれば、収入や就職などの面で「社会的格差」が拡大すると嘆く。
既にこの傾向は見られるが、これが著者の言う第二の問題点だ。
いずれは「英語ができる階層」と「英語ができない階層」という社会階級的な分裂が生まれて国民意識の統一が保ちにくくなり、国家の維持までも危うくなると警鐘を鳴らす。


そして3つ目の問題点は、「言語権の侵害」。
言葉は単なる道具ではなく「権利」だと主張し、「英語の社内公用語化」が、もし日本語禁止や英語使用の強制を伴うものであれば、それは重大な「人権侵害」に当たると論じている。
言語権に対する意識が国際的に高まっている事例や、「英語の社内公用語化」が法律違反に当たる可能性があるといった法律家の意見紹介が興味深い。
英語の公用語化を検討している企業や人事担当者は、訴訟リスクを回避するためにも是非参考材料にするといいだろう。
日本語を守る、ひいては日本という国を守る道として、著者は「日本語優先主義」を説き、経済至上主義から文化至上主義への価値転換を提案する。
具体策に欠ける内容ではあるが、日本の言葉や伝統文化を尊重する著者の考え方は日本の未来を照らすための方策の1つといえる。
その他、英語公用語論の歴史をはじめ、英語が自社で公用語化されてしまった際の対応策にも触れているので、さまざまな角度から「英語の社内公用語化」を考察できる一冊となっている。
阪急コミュニケーションズ 1575円
(フリーライター:佐藤ちひろ =東洋経済HRオンライン)

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【私のコメント】

東洋経済は立派。
賛成論と反対論を対等に乗せる姿勢がある。
NHKさん、見習ってくれよ。