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2013年8月14日水曜日

ぬっポンの姿

日本が常任理事国になれないわけ

 国際法上、日本は独立国とは認められていない  

   最近はあまり聞かれませんが、憲法9条を改正するべきかどうかという議論が活発に行なわれていました。しかし実は、憲法9条を議論すること自体に意味がありません。そもそも日本には戦争を起こす権利がないからです。なぜなら日本は独立国ではないからです。その根拠は、1951年に調印された「サンフランシスコ講和条約」では、日本の独立は認められてはいないからです。日本語訳では、

   「連合国は、日本国及びその領水に対する日本国民の完全な主権を承認する」となっていますが、これは誤訳です。正確に訳すと、

   「連合国は、日本の人民による日本とその領域の十分なる自
を認める」となります。

   つまりこの文では、独立国の定義である「自治権」と「外交権」のうち、「自治権」しか認められてはいないのです。これは台湾と同じで、自治は認められていますが国際法上は独立してはいない。

   サンフランシスコ講和条約を結んだ当時の吉田茂首相は、帰国後日本の国会で「これで日本は連合国から独立できた」と言いました。しかし実際には、彼はサンフランシスコで、「これで日本は軍部(帝国陸軍)から独立できた
」とスピーチしていたのです。つまり吉田首相は、日本が軍部から独立したのであって、連合国から独立したのではないことをわかっていて使い分けていたのです。

   ですから国際法上では、日本はいまだに大日本帝国のままなのです。
   憲法を変えて国名も変えましたが、国際法上においては大日本帝国のままなのです。つまりサンフランシスコ講和条約を結んだのは大日本帝国であり、その講和条約は現在も有効です。通常、新しい国になれば賠償責任はなくなります。たとえば今のイラク政府には、フセイン時代の賠償責任はありません。これは会社が倒産した場合と同じで、たとえそこの従業員はそのままでも、法人が変われば借金はなくなるのと同じです。

   ですから本来は、大日本帝国から日本に代わった時点で、賠償責任はなくなるはずなのですが、しかしサンフランシスコ講和条約には、「継続して賠償責任を負う」と書かれています。国の名前は自由に変えられても、実態は変わらないと言っているのです。それは会社の名前が変わっただけであり、しかし前の社名の時の契約は有効なのです。

   ですから憲法9条論議について言えば、日本には「外交権」が認められてはいないということであり、簡単に言うと、日本の外交はアメリカを通さないといけないことになっているのです。外交権というものにおいて一番重要なのは、戦争を起こす権利です。本来主権国家はそうした外交権を持っているので、当然戦争を起こす権利があります。しかし日本は、外交権の中心的権利である戦争を起こす権利が、サンフランシスコ講和条約において認められてはいないのです。

   ですから憲法9条で「戦争を起こしません」ということに意味はなく、つまりそもそも憲法9条があってもなくても、本来日本には戦争を起こす権利がないのです。米国の作成した日本国憲法であれそれは日本の国内法ですが、サンフランシスコ講和条約は国際条約であり、当然国際条約のほうが優位にあるのです。つまり国際法上で外交権も認められていない日本は、未だ独立国ではないのです。

 日本は常任理事国にはなれない

   
国際連合とは、第二次世界大戦で勝利した連合国側がつくった組織です。
   そしてその国連憲章には、「ジャパンは敵国」という敵国条項が書かれており、国際連合にとっては日本は今も大日本帝国ですから、現在の日本も敵国なのです。だから日本は国際連合の安全保障理事会の常任理事国にはなれないのです。

   この事実を知らないのは実は日本人だけなのですが、しかし世界の外交官にとっては常識のことです。サンフランシスコ講和条約の正文は、英語、フランス語、スペイン語の3ヶ国語だけであり、日本語は参考に付けられてはいますが正しい文ではなく、しかも日本語訳では正文が誤訳されています。世界の外交官はそれを英語で読んでいるので、「日本は独立していない」というのが常識になっています。

   つまり国際連合にとって、日本はいまだにアメリカの属国なのです。

   そう考えると、日本国内から米軍基地を追い出す権利はそもそも最初からないということです。アメリカが日本を51番目の州にしなかったのは、日本の人口が多く、米国の人口約3億人に対し日本は約1億2000万人で米国の4分の1を占めることになり、そうなると日本をアメリカの州にした場合歴代大統領は日本人になってしまいます。「公用語は日本語に」「国名もジャパンに」と言い始める可能性があるので、州にしなかったのです。でも実態は、アメリカの州と同じです。

 東京地検特捜部は(連合国軍総司令部)GHQの組織

   日本がアメリカの州であることがはっきりと現れている例が、東京地検特捜部です。
   なぜなら、東京地検特捜部はGHQの下部組織として作られたものなのです。GHQ(連合国軍総司令部)の一部門として作られた東京地検特捜部は、本来の名称は「隠匿退蔵(いんとくたいぞう)物資事件捜査部」であり、旧日本軍が隠した反米活動用の大量の隠匿退蔵物資を摘発するために作られました。その活動には、反米の組織や人物を取り締まることも含まれていました。

   だからいまだに、「反米の動きをすると東京地検特捜部に摘発される」と言われるのです。佐藤栄作首相や田中角栄首相も反米だったので東京地検特捜部に潰されたし、今の例で言えば小沢一郎氏もそうなのです。米国政府が「あいつをどうにかしろ!」と言ったら、東京地検特捜部は忠実に動きます。つまりアメリカの論理では、東京地検特捜部はいまだにGHQ、現在で言えばCIAの一部なのです。

   警察用語で「A」というのがあります。
   Aというのはアメリカのことです。もし日本の警察が誰かを逮捕しようとしても、そこにアメリカ大使館から電話が1本入り、「Aがダメだと言っている」ということになると、その事件の捜査は打ち切られることになり、捜査本部は解散です。このような事実をほとんどの日本人は知りません。その理由は、戦後のGHQによる支配下において徹底的な検閲が施行されてきたからです。つまり検閲の事実そのものを報道することが許されておらず、それは国際法上でもかつてなかったほどの徹底した検閲であったのです。

   しかしその後、GHQがいなくなったあとでも、そうしたことは形を変えて存在し続けており日本人は自主的にそうしたことを続けています。それは私の親の世代も含め、朝日新聞やNHKなどすべてが検閲されていたのであり、実にみごとな洗脳というほかありません。


        book 『あなたは常識に洗脳されている』 苫米地英人著 大和書房

2013年8月2日金曜日

米国の腰巾着、太鼓持ち ぬっポン

転載のみ:

副島国家戦略研究所 中田安彦
(2013年7月23日)
 参議院選挙が終わった。結果は中道左派の大敗北であり、日本の政治は自民党という宗教右派的な勢力と経団連を代表する財界勢力、そして官僚勢力を支持母体とした「利権連合体」となって圧倒的な存在感を示すことになった。
 さて、編集部の方からは参院選突入直後に、「お好きなテーマ」で書いてほしいという依頼があったので、今回は私が最も専門としている「アメリカの知日派(ジャパン・ハンドラーズ)」が、参院選後の日本をどのように再編していこうとしているかという点について述べたい。


 ご存じない人のために説明しておくと、日本という国はアメリカの同盟国とは言いながらも、軍事力の差や諜報力の差を踏まえると、実際は「従属国」(クライアント・ステイト)というにふさわしい。日本は独立国ではなく、アメリカの思惑によって動かされてきた属国なのである。これは、私の師匠である副島隆彦だけではなく、オーストラリア人の大学教授であるガヴァン・マコーマックや果てはアメリカのエスタブリッシュメントのズビグニュー・ブレジンスキー元米大統領国家安全保障担当補佐官も長年指摘してきたイデオロギーの左右を問わず通用するう世界の「常識」なのだ。
 知らぬは日本人ばかりなりと言ったところだが、それでも最近はタクシー運転手ですら「日本はアメリカの属国ですからね」とボヤく。庶民レベルではすでに浸透している認識であるといってよい。この事実を無視しているのは大手メディアだけである。
 覇権国の周辺国 が属国になってきた例は枚挙にいとまがない。例えば、大英帝国の支配下にあったインドもそうだ。インドには英国の植民地行政官が派遣されており、そのイギ リスの「知印派」は独特の知的階層を構成してきた。それと同じようなことがサンフランシスコ講和条約とその抱き合わせとしての米日安全保障条約によって名 目上独立した日本においても行われている。つまり、日本の統治機構、なかんづく、外交政策においてはこの支配体制が顕著である。内閣のもとに外務省があっ てそれが時の内閣の指揮監督を受けて外交方針を決定するのではなく、実際は内閣は外務省の助言に基づいて外交を行なっており、その外務省を指揮監督するのが同盟国アメリカの国務省という構図になる。
 その米国務省において日本を担当するのが東アジア担当国務次官補という役職であり、あるいはホワイトハウスの国家安全保障会議(NSC)アジア上級部長といった役職である。これらの官職を経験した国務省の官僚たちが民間に天下ってシンクタンクなどで財界の支援を受けながら日本研究を行なっている。逆もまた真なりで、シンクタンクの知日派が官職に抜擢される場合もある。これが俗にいう「回転ドア」というやつである。
 今回、皆さんに紹介するのは、そのような回転ドアを行ったり来たりしている、マイケル・ジョナサン・グリーンという人物である。グリーンは現在はワシントンにある米戦略国際問題研究所(CSISというシンクタンクの日本部長をしているが、かつてはブッシュ政権においてNSCアジア上級部長を経験していたほか、米外交問題評議会の研究員でもあった。
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マイケル・グリーン
 なぜこのグリー ンがここで特に紹介するほどに重要なのかというと、グリーンは現在日本に滞在中であり、お盆ころまで日本の有識者と参院選後の日本の安全保障について議論 していくということがすでに報道されているからである。そして、参院選に圧勝した自民党政権は憲法改正まで視野にいれながら、安倍首相が参院選後の記者会 見で明らかにしたように、「集団的自衛権の解禁」にまで踏み込んでいくと思われる。さらに、グリーンがかつて役職を務めていたNSCと同格の国家安全保障会議(日本版NSCを日本国内においても設置する動きが急加速している。
 実は、集団的自衛権とNSCの 設置はグリーンが、かねてから日本政府に要求してきた内容である。それ以外にも他のジャパン・ハンドラーズであるリチャード・アーミテージやジョゼフ・ナ イも「アーミテージレポート」という形で主に安全保障問題に視野を定めた対日戦略案を去年の終戦記念日に発表しているが、同レポートの発行元もグリーンの 所属するCSISである。
 グリーンは、参院選直前に来日して、自民党の勉強会にも出席している。グリーンは自民党の勉強会では、安全保障問題とTPP推進の2つを大きく主張していた。
 なお、グリーンと面会した自民党の政治家は、参院選直前に週刊誌で海外での買春疑惑が報道された、西村康稔・内閣府副大臣、桜田義孝・衆議院議員、安倍首相の閨閥に属する岸信夫・参院議員ら中堅議員の名前が確認されている。それ以外にも、自民党青年局の小泉進次郎局 長、辻清人、牧原秀樹、大野敬太郎、豊田真由子各議員らのような米国留学経験がある議員たちは面会している。自民党内には当政務調査会の田村重信・調査役 などの橋本龍太郎政権の「日米新ガイドライン」の改訂時から続く太い独自の「グリーン人脈」もある。民主党では前原誠司・元外相や長島昭久・元防衛副大臣 などが揺るぎないグリーン人脈を持っている。長島元副大臣などはグリーンと同じ外交問題評議会研究員の出身である。
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 小泉進次郎は、2006年に小泉純一郎が首相を退任した直後にコロンビア大学に留学し、歴代首相の指南役であるジェラルド・カーティス教授(日本政治)のもとで学んだあと、07年にはグリーンのいるCSISで 客員研究員を努めて何本かグリーンと簡単な英語での情勢レポートを書いている。そして、08年の写真週刊誌(2008年10月の「フライデー」)では、純 一郎が進次郎に地盤を譲ったことが報道された直後に、マイケル・グリーンらしき米国人と進次郎が駐日米大使館に近い赤坂のホテルで密談している姿が確認さ れている。
 なお、カーティス教授は、かつてCIAに対する情報提供者として、船橋洋一・前朝日新聞主筆とともに並んで「CIA文書」に名前が挙げられた人物である。その船橋洋一だが、震災後に経済復興や国家戦略を議論する「日本再建イニシアチブ(RJIF)」を設立し、グリーンと前アジア担当国務次官補のカート・キャンベルを特招聘スカラー(研究者)に抜擢している。このように書いていくと、読者の皆さんも、米日関係というものは、極めて狭い「インナーサークル」の間で動かされているのだな、と思われるだろう。実際そのとおりなのである。
 グリーンの経歴は非常に興味深い。今後もこのようなルートで人材が供給されていくのだろうことは想像できるので、ここで紹介したい。古森義久氏の『透視される日本』(文藝春秋社)などを参考にした。
 グリーンは、 1983年に、米オハイオ州のケンヨン・カレッジ史学専攻を卒業しているが、14歳ころにジェームズ・クラベルの『将軍』という小説を読んで、関心を持っ ていた東洋の国日本に感心を持ったという。そこでグリーンは、ケンヨンカレッジ卒業後に日本の文部省の英語教員募集に応じて、来日。静岡県榛原郡吉田町に 配属されて公立学校で英語の先生をしている。今回の来日でもこの「静岡のど田舎」をグリーンは訪問し、旧友とTPPについて議論をしたと、記者クラブを集めた会合で語っている。その後、グリーンは東大大学院に学び、中曽根康弘の側近であった椎名素夫衆議院議員(当時)の秘書をしたり、「岩手日報」でも研修をしていた。何やら計画的に知日派として育成されたかのようなお膳立てである。
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椎名素夫

 なお、グリーン が秘書を務めた椎名素夫とは、自民党の大物政治家・椎名悦三郎の息子であり、アーミテージ元国務副長官と極めて親しい関係にあった。中選挙区時代の岩手で は田中派の小沢一郎と後藤新平の閨閥にある椎名家が自民党議員として存在していたが、グリーンが反田中系の中曽根の部下のもとで研修をしているのは興味深 い。なお、前述した小泉進次郎のもう一人の師匠であったカーティスも知日派になるきっかけは、中曽根派の政治家である佐藤文生(さとうぶんせい)のもとで選挙運動に参加した ことであった。余談だが、椎名素夫は海外では「ホモ疑惑」について論じられたことでむしろ知られているかもしれない。

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ジェラルド・カーティス
 これらの話を見 るにつけ戦後の米日関係はつくづく中曽根康弘を軸に動いていたと実感する。この中曽根は伝統的な宗教的な価値観を重視してきた岸信介系の反共保守の系統は 異なる系譜に属しており、若い頃からヘンリー・キッシンジャーを始めとする米支配層に育てられてきた人物である。外交政策上はリアリズムに属するこの系譜 は民主党の長島昭久・元防衛副大臣にも引き継がれている。安倍晋三の祖父である<岸信介の清和会系><中曽根=民主党(凌雲会・花斉会)系>は 「対米従属」である点は全く同じだが、イデオロギーの面で全く違う。そして米国は前者のほうが管理しづらい勢力だと感じている。そして旧田中派系は小沢一 郎に引き継がれていたが、もう殲滅されてしまった。自民党内に残っている額賀派なるものは、もはや田中派ではなく清和会とほとんど同じである。
 さて、グリーンが日本に来るきっかけになったのが、JETThe Japan Exchange and Teaching)プログラムである。これは国の仲介で、県や市町村などが外国の青年を誘致する事業で、地方の学校で英語を教えたりするものだ。このJETにグリーンは参加していたわけだ。これが属国日本を管理する高等弁務官のような国務省役人の育成に役だっている。アメリカという国はこういう地味なプログラムも大きな戦略目標に基づいて行なっている国だ。
 五百旗頭真・元防衛大学校長によると、このJETに参加して、現在知日派として活動しているのは、他に、マイケル・オースリンAEI日本部長であり、在沖縄海兵隊外交政策部長のロバート・エルドリッヂらであるという。オースリンは米経済紙WSJのアジア版に定期的に米日関係についてのコラムを寄稿している。
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マイケル・オースリン
 もっと言えば、グリーンの現在の妻であるアイリーン・ペニントンもグリーンとたくさんの共通点を持っており、元はといえば、JETの派遣で長崎県で英語を教えていた。グリーンと奥さんは、彼が日本では中曽根政権のころに博士論文を「日米の同盟関係」というテーマで書いた際に在籍した大学院であり、ジョンズ・ホプキンス大学国際問題大学院(SAIS)の同窓生という関係である。(「週刊新潮」2006年2月2日号)
 このグリーンを高く買っているのが安倍晋三現総理大臣であることはいうまでもない。安倍首相はマイケル・グリーンが米外交専門誌「フォーリン・アフェアーズ」に07年に書いた「Japan is back」(日本は戻ってきた)という論文に明らかに呼応する形で、去年の衆議院選挙の自民党スローガンを「日本を、取り戻す」と決めている。また、今年2月に訪米した折にグリーンのCSISで記念講演をした際にも安倍首相は「Japan is Back」という表現を使って演説を行なっている。つまり、自民党の「日本を取り戻す」というのは、「日本をアメリカが取り戻す」ということにほかならない。 この背景には知日派の間での民主党鳩山政権時代に日本が対米自立を模索したことへのいらだちがあることも言うまでもない。何しろ、安倍晋三は、グリーンの 結婚式が米東部で05年の大晦日に開催された際に、「日本国民が最も信頼するマイケル・グリーン博士とアイリーンへ おめでとう!安倍晋三」というメッ セージを送っている。「日本国民を勝手に一人で代弁してほしくないよ」と私などはあきれ果ててしまうが、これが米日関係の実態である。
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 そのグリーンが、カート・キャンベルとともに、参院選期間中の16日に船橋洋一の設立した「日本再建イニシアチブ」のスカラーの肩書きで日本記者クラブの会員(つまり記者クラブメディア)に向けて一時間半ほどの講演会を行った。まず、共同通信の報道を引用する。
(貼り付け開始)
元米高官、安倍政権に注文 中韓との関係改善を

 来日中のキャン ベル前米国務次官補とグリーン元米国家安全保障会議アジア上級部長が16日、東京都内の日本記者クラブで会見した。知日派として知られる両氏は参院選の投 開票日を21日に控えた安倍政権に対し、外交面では日韓、日中関係の改善を促し、内政・経済面では環太平洋連携協定(TPP)の年内妥結や日本経済の持続 的成長に期待を示した。
 キャンベル氏は、歴史認識問題でぎくしゃくする日韓関係などを念頭に「近隣諸国との関係改善を促す」と注文。グリーン氏も、関係悪化は台頭する中国に対処する上で「日韓双方の立場を弱める」と述べた。
2013/07/16 20:20   【共同通信】 
(貼り付け終わり)
 この講演のもよ うは一部では報道されたが肝心なことが全く報道されていない。この講演はインターネットで動画配信されているのでそちらを視聴したところ、グリーンが他の 部分で極めて重要な日本の安全保障政策についての発言を行なっていることを私は確認した。以下に箇条書してみよう。船橋洋一もこの講演ではしゃべってい る。「グリーン語録」をじっくりと読んでいただきたい。(http://t.co/IqwQYP9UOQ
*船橋洋一「グリーン、キャンベルは私どものシンクタンクの特別招聘スカラーに参加している。2年間の契約だ。毎週15人と日本の戦略プランを話しあっている。二人はこの20年間のアジア太平戦略の要。深い洞察力を持つ二人である」
*船橋洋一「グリーンは共和党だが過激な茶会党と違った穏健派だ。キャンベルは、ハードリアリズムの思想の持ち主。違っているように見えて、実は二人は似ているんですね。この二人がいれば最強タッグだ」
*グリーン「私達のRJIFのプロジェクトでは15人の著名な専門家と一緒にNSCの役割の検討を行なっている。日本政府に対してどのようにグランドストラテジーを立てるかどうか提案する前提で検討している」
*グリーン「アジアの秩序がパックス・アメリカーナになるのかパックス・シニカ(中国覇権)になるのか、その間で緊張関係が続くのか。真剣に考える時期が来ている。国家目標のために、日本の持っている手段を検討する必要があり、そのために日本版NSCが存在するわけだ」
*グリーン「米国は強い日本を必要とし、NSC設置は日本を強くするチャンスだ。私も船橋さんのシンクタンクでNSCをどのように設計していくことの議論に参加する特権を得た」
グリーン「私は政 府の人間ではないが、安倍政策のうち、経済復活政策は米国の国益に一致する。他の海洋国家に手を差し伸べる政策も米国の国益と米日同盟に一致する。米国政 府は国内の問題なので改憲、9条改正に反対することはないだろう。経済と集団的自衛権の問題の優先順位が私的には高い」
*グリーン「米日 の戦略が緊密に整合性を持たなければ中国に対抗できない。日本側にはワシントンで日本の対中戦略を説明を尽くしてくれ。抑止力、説得が含まれていなければ ならない。米に日中関係改善の手段も説明せよ。これらは一応安倍総理の戦略に含まれているが包括的な形でワシントンに説明せよ」
*グリーン「経済は国家の強靭さにとって根本的に重要だ。だから、安倍政権にとって、経済成長を促す三本目の矢は重要だ。市場の反応は今そこまで好意的ではない。参院選後に規制撤廃や構造改革が必要だ」
*グリーン「経済以外では日本の戦略にとって重要なのは日米同盟だ。日米同盟は日本が国益を実現させるためのツールであると認識している」
*グリーン「危機が発生すれば米国はアジアに駆けつけることは当然だが、危機発生前の統合戦略というものが、まだ存在しない。他には日韓関係が重要だ。米国は日韓関係を危惧している」
*グリーン「日本は強力なソフトパワーを入手した。TPPへの参加を決めたことだ。私は、先週静岡のど田舎にいってTPPがいいか悪いか、日本酒を片手に農家の旧友たちと激論を語り合った。60歳より上の人は反対、下の人は賛成だった。しかし、地域の機構を大転換するきっかけとなるのがTPPで重要だ」
*グリーン「靖国 についてだが、個人的な見解を述べたい。国の指導者が犠牲を払った国民に経緯を表明するのは当然。豪州のキャンベラの例もある。日本の指導者の多くが靖国 を参拝することは日本が平和愛好国ではないことを決して意味していない。そのことを世界は理解するべきだ」 

 以上のように、安倍政権の支持母体である靖国崇敬者(カルトオブヤスクニ)と米国で呼ばれる政治勢力について、宗教的な感情を尊重しながらも、政治的な影響力については警戒しつつ、同時に安倍政権が推し進める日本版NSC構想については、しっかりと議論の段階で介入し、米国の利益を損なうような制度設計には断固として反対する姿勢を見せている。経済問題について言えば、TPPを安全保障問題とリンクさせ、中国を国際ルールに従わせるために日本のTPPへの積極参加が必須であるとしていることがわかる。グリーンは、震災直後にもCSISのスタッフと来日し、ボーイングなど米財界の意向を受けて東北復興プランを作成した。このプランは経団連との共同プロジェクトでも有り、グリーンは軽井沢で行われる経団連夏期セミナーにも参加していた。(今年のセミナーに参加したのは同じく知日派のケント・カルダー)
 民主党政権時代はアメリカの知日派は日本のアメリカ離れを危惧し、欧州型の東アジア共同体を模索した鳩山政権に対する厳しい圧力を加え、民主党内に知日派が育てた、前原誠司、長島昭久、渡辺周らの凌雲会・花斉会系政 治家を重視し、対米自立派の拡張を抑えた。この対米自立派に対する攻撃の背景にはグリーンら知日派と連携して、民衆が選んだ政府を潰しにかかった外務省の 官僚の存在があったことは、すでにウィキリークスの流出米公電で明らかになったことは拙著『日本再占領』で指摘したとおりである。
 グリーンは日本版NSCについての議論を船橋洋一のシンクタンクと行う一方で、知日派の枠を広めるための活動を、笹川平和財団とCSISの連携事業として行なっている。例の統一球問題で、楽天球団オーナーの三木谷浩史から叩かれた、プロ野球コミッショナーの加藤良三・元駐米大使らと一緒になって、笹川平和財団で日米安全保障研究会という勉強会をたちあげており、RJIFと並行して「日本のアメリカ離れ」を防ごうとしている。
 中曽根政権時代の1986年に設立された、笹川平和財団は岸信介の盟友であった笹川良一の資金で設立されたものだけあって、反共親米の政治色が強い。スタンフォード大学で国際政治学を学んだ、加藤元駐米大使の娘・加藤和世は、アーミテージのコンサルティング会社である「アーミテージ・インターナショナル」に所属したあと、CSISに所属し、現在は笹川平和財団に所属している。米国全体では、中国を重視する動きが高まっていく中、知日派という一種の「利権マフィア」の間では、「日本のアメリカ離れ」を抑止するような動きが先鋭化している。笹川マネーはアメリカの日本工作のための財団である米日財団も1980年に設立している。
 知日派にとって日米関係はあくまで生きていくための「飯の種」であり、それが外務省にとっては日米同盟が中核の利権であることと呼応しあっている。それはオスプレイ配備などで浮き彫りになった日米地位協定問題だけではなく、原子力政策に大きな影響を持っている、中曽根政権時代に現在の形になった「日米原子力協定」の問題を見てもおなじ構図である。外務省が「日本の安全保障」とは名ばかりに自分たちの権益・省益を守ろうとして日本の国益を長期的に損ねる外交政策を時の政府に行わせている。
 なお、日本版NSCの要職には、ウィキリークスでさんざん日本の民主党政権を悪し様にこき下ろし、米国との交渉で「あまり早く日本政府に譲歩してくれるな」と普天間交渉について要請したことが派手に暴露された、高見沢将林(たかみざわのぶしげ)(安全保障・危機管理担当)が就任すると噂されている。高見沢は、防衛省の背広組官僚で、防衛政策局長から防衛研究所長を歴任している。外務省・防衛省ともに対米従属が全面復帰している。
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高見沢将林・内閣官房副長官補
 最後に参院選後 の日本政界について述べよう。マイケル・グリーンは、去年の衆院選の真っ最中(12月15日)に「東洋経済」の電子版にて、「総選挙が左派に最後のとどめ を刺す」という予言めいたインタビュー記事に登場している。実際、衆院選でも自民圧勝でリベラル系の親米派や対米自立派の受け皿になるはずだった小沢一郎 のグループは殲滅された。今回の参院選でも小沢が率いる「生活の党」や亀井静香が所属していた「みどりの風」は大惨敗。小沢は選挙戦終盤で新潟県の浦佐駅 前の田中角栄銅像前で今の自民党政権の政策の誤りを訴えたが、世論は全く受け入れなかった。これは小沢一郎がアメリカ主導の国策捜査によって打撃を受けた こともあるが、一報で震災直後に被災地入りしなかったことや、自由党時代の中道右派的な政策から急速に社民党に近い左派政策にかじを切ったと受け取られた ことの影響だろう。
 グリーンの薫陶 を受けた小泉進次郎は震災直後に被災地を訪問するパフォーマンスも忘れず、今回の参院選でも「ドブ板選挙」に徹した。これまで述べてきたことからも、進次 郎が現在のグリーンにとっての最強の「代弁者」であることは理解されるだろう。その背後には衆院選と参院選で当選した若手政治家がもれなく所属する党青年 局の存在がある。極論すればグリーンは青年局を進次郎を通じて牛耳り、名実ともに植民地日本駐在の高等弁務官になりおおせたとも言えるだろう。
 空恐ろしい話で あるが、残念ながらこれが衆参両院選挙の結果が突きつけた現実である。私が書いた『日本再占領』からそろそろ2年。米知日派の外務省と談合しての日本再占 領政策は中国の台頭を背景にしながらますます加速し、日本は世界から「米国の腰巾着」という目でで見られて、軽んじられていくだろう。(終わり)