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2014年4月29日火曜日

楽天の「英語公用語化」は、ヤバいです

■ 英語公用語化によるメリット

 ――楽天は2010年の初夏から社内での英語公用語化を進めてきました。当初、かなり批判もありましたが、現時点での自己評価は? 

 (笑)批判ありましたね。なんで批判されるのか、それがわからないですね。一企業がやることはほっといてくれればいいんじゃない。

 ――今、どうですか。振り返ってみて。

 いや、もうこれは、ヤバイですね。

 ――どうヤバイですか? 

 いや、もうこれがなかったら、たぶん今の地位にはいないと思います。売り上げもどんどん伸びていますし、国際的なプレゼンスも上がってきていますし、入社する社員のクオリティも非常に上がってきています。社員の視野もまったく変わってきている。

 いくつか事例を挙げると、ひとつ目はエンジニアの採用。現在、日本のエンジニアの採用の70%は外国人です。彼らは日本語をまったく話しません。だから新入社員説明会というと、昔は外国人が数人いるという感じでしたが、今は「日本人いたの? 」という感じになってきました。

 インターネット企業は技術がいちばん重要です。ただ、日本でコンピュータサイエンスを専攻している卒業生は、だいたい年間2万人しかいません。それに対し、アメリカは約6万人、中国は100万人、インドは200万人いるんですよ。だから何百万人のプールから人を雇うのか、それとも2万人のプールから雇うのかによって、競争優位が全然変わってきます。

 2つ目の事例として、日本で築いてきたビジネスのノウハウを、海外に浸透させていく流れが出てきました。今までは「日本」と「国際」の2つに担当を分けていましたが、今年からこれを一緒にしました。つまり日本の楽天市場のトップが、海外のeコマースについても責任を持つわけです。

 これはけっこう画期的なことで、彼らは日本で培ったノウハウを、全部、海外に移植しようとするわけです。僕らは日本でゼロからビジネスを立ち上げて、もうすぐ流通総額が2兆円を突破しますが、そこまでに至るプロセスを全部わかっているのです。あのときはこういうふうにするべきだ、とか。

 今度、日本で成功している営業のトップやマーケティングのトップが現地に入ります。この人たちは2年前、3年前は英語をまったく話せなかったのですが、今はもうひとりで行って、向こうのクライアントと普通に話ができる状態になっています。ですから、経営の考え方も、やり方も、社員の意識も大きく変わってきたということです。

 ――日本のネット企業は、海外から輸入してきて、それを日本にアレンジすることが多かったですが、今後は日本で培ったノウハウや経験が、海外で生かせるようになるわけですね。

 われわれはずっとeコマースをやってきているので、ノウハウがあるわけです。今までは「日本」と「国際」に分かれていたのを、一緒にすることによって、システムのコストも下がるし、マーケティングなどのノウハウも共通化できるので、まったくエコノミクスが変わってくる。そして、海外のサービスのレベルもどんどん上がってくる。こうした効果がかなり出てきています。

 ――英語公用語化に踏み切ったときは、「英語は単なる手段じゃないか、そんなのは本質的ではない」という批判もありましたが、英語化によって、ゲームの戦い方が根本から変わった、と。

 もうまったく変わりましたね。もうこれなしでは考えられないですね、本当に。だから、英語化していなかったら、ViberやVikiやKoboの買収も無理だったと思います。「彼らをマネジメントできない」ということになりかねませんから。それから相手側も、そういう会社に売ろうとは思わないけど、「まあ楽天だったらいいかな」というふうに思うということですよね。

 ――最近、ハーバードやスタンフォードといった大学からの採用も増えていると聞きました。

 そうですね。ハーバード、イェール、スタンフォード。もともと少ないので、社内で20人も30人もいかないですが、けっこう入ってきています。

 ――三木谷さん自らシリコンバレーに出向くことも多い? 

 半分ローカルみたいな感じで、シリコンバレーの起業家らと交流して、家に呼んだりバーベキューをやったりという感じですね。だからまあ、本当に名だたるIT企業の社長と、そのへんの喫茶店でお茶飲んだりすることができるようになってきました。


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東洋経済オンライン より
http://toyokeizai.net/articles/-/8423

英語を社内公用語にしてはいけない3つの理由 津田幸男著

2010年、楽天とファーストリテイリング(以下、ファストリ)が英語を社内公用語にすると宣言し、各所で賛否両論を呼んだ。
筑波大学大学院教授である著者も、このニュースに衝撃を受けた者の一人である。
英語支配論や言語政策、国際コミュニケーション論を専門とする著者はこの発表に危機感を抱き、両社の社長へ抗議の手紙を送った。
本書は、実際に送った手紙の全文掲載から始まる。その中で、「英語の社内公用語化」の弊害について著者が問題視しているのは主に3点。
この3点の理由を明らかにしていく構成で丁寧に論が展開されていくので読みやすい。
まず1つ目めは、「日本語・日本文化の軽視」の問題だ。
現在の日本には「英語信仰」が広がっており、その結果「英語偏重社会」が生まれ、日本語や日本文化の軽視が起きていると指摘している。
確かに、昨今の日本人の英語への傾倒ぶりは顕著だ。昇進の基準としてTOEICなどの結果を重視する企業が増えている。
新卒採用においても海外留学生や外国人の採用は年々増加しており、
最近では武田薬品工業が13年度卒の新卒採用からTOEIC730点以上の取得を義務づけた。
英語教育も過熱気味だ。
文部科学省は02年から「英語が使える日本人」の育成政策を打ち出している。
現に英語能力試験の結果を単位取得や卒業要件にする大学が増加しており、
11年の4月からは公立小学校でも英語が正式科目としてスタートした。
著者はこの英語偏重の流れが日本語の衰退を招くと憂う。
特に幼少期からの英語教育は、日本語よりも英語を使うことを子どもたちに奨励するようなものであり、
最終的には次世代が日本語を軽視して捨ててしまうこともありうるからだ。
ロシア語教育が進み、母国語が消滅の危機にあるウデヘ族のエピソードはその危険性を大いに物語っている。
著者は母語である日本語の行く末を案じているからこそ、英語偏重を助長する「英語の社内公用語化」に猛反対しているのだ。
「ユニクロや楽天のような企業は『英語信仰』に取り憑かれているので『英語社内公用語化』という『英語偏重』政策を打ち出したのです。まさに『日本語軽視』」
と憤る。
特に『週刊東洋経済』10年6月19日号の楽天会長兼社長・三木谷浩史氏のインタビューを引用した“三木谷批判”は痛烈。
三木谷氏のことを「英語信仰→英語偏重→日本語軽視」の思考プロセスを文字どおり実行している人物と評し、
人格形成よりも競争を強調する彼の英語教育論は、
“経済至上主義の思い上がった考え方”と非難している。
さらに「英語の社内公用語化」が一般的になれば、収入や就職などの面で「社会的格差」が拡大すると嘆く。
既にこの傾向は見られるが、これが著者の言う第二の問題点だ。
いずれは「英語ができる階層」と「英語ができない階層」という社会階級的な分裂が生まれて国民意識の統一が保ちにくくなり、国家の維持までも危うくなると警鐘を鳴らす。


そして3つ目の問題点は、「言語権の侵害」。
言葉は単なる道具ではなく「権利」だと主張し、「英語の社内公用語化」が、もし日本語禁止や英語使用の強制を伴うものであれば、それは重大な「人権侵害」に当たると論じている。
言語権に対する意識が国際的に高まっている事例や、「英語の社内公用語化」が法律違反に当たる可能性があるといった法律家の意見紹介が興味深い。
英語の公用語化を検討している企業や人事担当者は、訴訟リスクを回避するためにも是非参考材料にするといいだろう。
日本語を守る、ひいては日本という国を守る道として、著者は「日本語優先主義」を説き、経済至上主義から文化至上主義への価値転換を提案する。
具体策に欠ける内容ではあるが、日本の言葉や伝統文化を尊重する著者の考え方は日本の未来を照らすための方策の1つといえる。
その他、英語公用語論の歴史をはじめ、英語が自社で公用語化されてしまった際の対応策にも触れているので、さまざまな角度から「英語の社内公用語化」を考察できる一冊となっている。
阪急コミュニケーションズ 1575円
(フリーライター:佐藤ちひろ =東洋経済HRオンライン)

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【私のコメント】

東洋経済は立派。
賛成論と反対論を対等に乗せる姿勢がある。
NHKさん、見習ってくれよ。

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