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2014年1月3日金曜日

軍国化?

<時代を読む>意図無ければ罪も無しか 浜 矩子東京新聞 12月29日

 「もとより、中国あるいは韓国の人々の気持ちを傷つける考えは毛頭ない」。十二月二十六日、靖国神社参拝後に安倍晋三首相がこういった。
 この発言を含む首相談話の英語版が、首相官邸のホームページに掲載されている。上記の英語バージョンは次のとおりだ。
 It is not my intention at all to hurt the feelings of the Chinese and Korean people.
 日本語の「考えは毛頭ない」に相当する部分が It is not my intention at all の個所だ。 intention は「意志」あるいは「意図」の意味だ。
 「そんな意志は全くございません」「そのようなことは、全然意図しておりません」。こういう言い方を聞くと、たちどころに歯が浮いてかなわない。実に誠意がない。こんなふうにうそぶく人々は、およそ、何をたくらんでいるか分からない。実に腹立たしい。
 意図してさえいなければ、どんな結果を招いていてもいいというのか。許されるというのか。こちらに傷つける意図がなければ、相手は決して傷つかないとでも思うのか。あるいは、こっちが意図していないなら、傷つく方が悪いというのか。勝手に傷つくなら、致し方ない。知ったことか。そういうことなのか。
 この種の発言で突っ走って行く人は、やがて、つぎのようにいうようになる。「そんなつもりじゃなかったんです」。これが出た時は、もう手遅れだ。取り返しのつかないところまで、相手を傷つけてしまっているのである。
 意図が無ければ罪はない。意図が良ければ、悪くない。傷つける意図無き者は、決して相手を傷つけない。これが大人のいうことか。
 人の足を目いっぱい踏みつけても、意図がなければ、相手は痛がらないのか。相手がいくら痛がっていても、「だって知らなかったんだもん」と舌を出してそっぽを向くのか。その気が無ければ、人を車でひき殺しても、相手は死なないとでも言うのか。こちらにその気が無ければ、相手はひき殺されても仕方がないのか。
 かくも幼児的感覚で、政治が執り行われていいのか。政策が形成されていいのか。
 子どもと大人の最大の違いは、どこにあると考えるか。答えは明らかだ。それは、人の痛みが分かるか否かにある。新生児には、人の痛みが全く分からない。そこから出発して、人間は次第に人の思いに心を配るようになる。そして願わくば、人の痛みを自分の痛みとして受け止めることができるようになる。そのような魂の力こそ、大人の力だ。
 皆さんはアダム・スミスをご存じだろう。経済学の生みの親だ。大著「国富論」の著者だ。彼はまた、「道徳感情論」の著者でもある。
 「道徳感情論」あっての「国富論」だった。そのようにいわれる。経済活動は、道徳的感情に根差していなければならない。ざっくりいえば、そのような理念に基づく書だ。
 その中で、スミス先生は次のように言っている。「我々は、他者の悲しみを目の当たりにして、しばしば悲しみを感じる。…このような感情は、何も高潔で人間性あふれる人々に限ったものではない…。最大級の悪者で、最も平然と社会の秩序を踏みにじるヤカラでさえ、このような感情と無縁ではない」(翻訳筆者)。そのはずだと思う。そう思いたい。だが、今、そこがかなり心配になって来ている。信仰厚きスミス先生、どうか、我らのために祈りたまえ。

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<参照>

「死にゆく兵たちが『靖国で会おう』などと語り合うなんて、実際の戦場ではありえない美談。あるのは、ただ悲惨な死だけだった。」

補給を無視した作戦で多くの戦死・餓死者が出た太平洋戦争のインパール作戦で死線をさまよった、山崎教興さん(92)〔中日新聞12月27日から〕。

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藤原彰著「餓死(うえじに)した英霊たち」(青木書店)http://homepage3.nifty.com/sizenrankato/minpou/minpou2001/minpou2001.8.19/newpage4.htm

http://homepage3.nifty.com/sizenrankato/uejinisitaeireitati.jpg アジア太平洋戦争で戦没した日本軍人の総数は約230万人といわれています。
 なんと、その6割以上の140万人前後が戦闘行動による戦死ではなく、餓死もしくは飢餓による病死であったのです。
 食糧補給を無視した無謀な戦争拡大で、飢餓地獄の中で野垂れ死にした実態が解明されています。
 ガダルカナル島の戦いは、戦没者11万8700人のうち、9割の9万3500人が餓死、及び栄養失調・薬品不足のためのマラリアによる病死です。
 ポートモレスビー攻略戦とニューギニアの第18軍の戦没者12万7600人のうち、9割以上の11万5千人、インパール作戦では78%以上の14万5千人が餓死。中部太平洋の孤島で置き去りにされた半数の12万5千人が餓死・病死です。
 戦場で最も多い50万人の戦没者を出したフィリピン戦では8割以上の40万人が餓死。
 中国戦線の戦没者はそれに次いで45万5700人ですが、その半数の22万7800人が栄養失調に起因するマラリア、赤痢、脚気による病死です。
 多数の若者が飢えと病気にさいなまれ、痩せ衰えて無念の涙をのみながら、密林の中で野垂れ死にしていきました。
 その原因が、食糧補給も考えない、やみくもの出兵。孤立した兵士は餓死か玉砕を迫られました。
 独断横暴な日本軍指導部による無茶苦茶な作戦の強制です。
 旧日本軍のむごたらしさが告発されています。

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