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2012年9月10日月曜日

騙しと欺瞞

日本にやっとLCC(格安航空会社)が増えてきた。欧米では約20年前から、東南アジアでは約10年前から、LCCが就航しており、格安で飛行機が乗れるのは、世界ではもはや当たり前の時代だという。
LCC関連の本「格安エアラインで個人旅行が変わる!」下川裕治著を読むと、いかに日本が消費者や国民の利益を無視して、既存の航空会社を守り、政治家・官僚の利権を守るために、規制緩和をせず、LCCの新規参入を認めず、結果、世界から乗り遅れ、競争力なき航空会社ができあがり、国民はバカ高い航空運賃を強いられ、挙句の果てには、こんなに守っているのに、JALが破綻してしまうという、おかしな事態にまで発展した。
国内線にLCCがばんばん就航し、結果、JALが破綻したというならわかるがそうではない。むしろ政治家や官僚によって航空業界に競争原理を導入しなかった結果、放漫経営、非効率、高コスト体質のために、ついに経営が息詰まったといえる。
思えば日本のほとんどの業界って全部この航空業界と同じではないか。高度成長期に構築してしまった大企業の拡大ビジネスモデルを守るために、大企業が官僚の天下りを受け入れ、官僚は大企業の既得権益を守ることに終始し、新規参入を拒み、でも企業有利になるようザルみたいな安全基準を導入し、そこに政治家も絡んで、政官財が一体となって、過去のビジネスモデルを守るために、無駄で莫大な税金が特定の大企業のために注がれてきた。
家電メーカーや自動車メーカーなんかも同じ。エコでもないのにエコポイントだのエコカーだの、特定業界を一時的に潤すためだけの税金がバラまかれ、でも需要の先食いにしかならず、結果低迷し、無駄な税金が延々特定大企業を守るためだけに使われている。日本の輸出依存度が15%程度しかないのに、政府・官僚と結びつきの強い輸出企業が、円高で潰れるとバカ騒ぎし、エネルギー政策や食料政策を考えたら、円高の方がはるかに日本に恩恵があるのに、為替介入をさせるなどさせてきた。
電力業界もそうだ。電力会社各社のあまりにずさんな安全対策、事故対応、原発オペーレーションが次々と明らかになっている。でも不思議だと思わないだろうか?電力業界が新規参入をばんばん認め、各社が猛烈な価格競争を強いられたために、安全対策が軽視されて事故を起こしてしまったというならわかる。(例えば長距離バス業界のように)
でも電力業界はまったく逆。電気という誰もが使う社会インフラを独占し、はっきりいって何の努力もしなくても、ボロ儲けできる状況。それだけ利益が出る守られた業界なら、安全対策にも金を使えばいいのにもかかわらず、10m以上の津波がくると自社で想定していながら、津波対策はまったくせず、でも原発立地自治体に莫大な寄付金をバラまいたり、スポーツ施設をはじめ、無駄な公共施設をプレゼントするなど、電気を独占して世界でも類まれな電気料金の高さを消費者に押し付け、いらんところにばかり金を使い、挙句の果てに事故を起こして、でもいまだにろくに社内リストラも行わず、役員報酬が復活するというとんでもないことを平然と行い、さらに高い電気料金をすべてユーザーに押し付けようとしている。
電力業界と航空業界ってまるで同じだな。東電もJALも同じ。政治家や官僚とつるんで、社会インフラを独占し、競争原理を導入させないことで、消費者無視、エリート意識で高給ばかりむさぼり、その見返りに必要でもない原発をつくりまくったり、いりもしない地方空港をつくって、採算があわないのに無理やり飛ばさせたりした結果がこの通りだ。
思うに日本は共産主義ではないか。それがこれだけ衰退している原因ではないか。旧共産圏が次々と崩壊したように、競争原理がなく、政治家と官僚が利権を独占・肥大化。労働者はこれだけ機械化・IT化が進んでいるのに、長時間労働を強いられている結果、労働の生産性は著しく落ち、でも既存の業界を守るために、消費者の安全を無視したルールが作られ、消費者の利益になる新規参入は阻まれ、その既得権益の維持コストが膨れ上がり、何度景気対策をしようが、景気対策=既得権益保護政策のため、借金だけが増え、税収は増えず、消費は停滞し、国民の意欲は失せ、結果、これほどまでに衰退・停滞した。
よく日本はガラパゴス化といわれる。ガラパゴス化とは、外界から隔絶された環境下で独自の発展を遂げ、その結果として世界標準の流れからかけ離れていく状態のことだが、別に日本は独自の発展すら遂げていない。ガラパゴス化なんてかっこいいものじゃない。単に鎖国共産主義だっただけではないか。
鎖国した江戸幕府の末路や、共産主義国家の末路と同じように、鎖国共産主義国家・日本の末路は目に見えている。
尖閣諸島を守ったところで、次々と中国企業に買収され、実質、日本社会が中国の支配下に置かれるなんてことも、あり得ない話ではない。
そういえばソ連が崩壊したのは1991年だが、その5年前にチェルノブイリ原発事故が起きた。日本で福島原発事故が起きたのは2011年。さて鎖国共産主義国家・日本は何年持つだろうか。
日本が衰退しているのは政官財の癒着。それによって競争原理を阻んだ共産主義体制を敷き、実質、高慢経営の大企業に有利なルールができ、消費者は高かろう悪かろうを強いられる始末。
日本が国民が幸せになるための社会になるには、すでに衰退している大企業や独占業界を守るのをやめ、規制緩和を行い、新規参入を積極的に行うこと。政官財の癒着を断ち切るため、政治家は地区ごとの選挙ではなく世代ごとの選挙に。官僚はすべて一括採用にして、省庁間の異動を行い、民間の中途採用を入れるなど、省益重視のシステムをすべて破壊すること。
新規参入を認めないのは国民の安全を守るためとよくいう。しかし世界の中でもバカ高い電気料金をこれまで払わせ、電気を独占していた東電が安全だったか?
311があっても未だ既得権益を守る体制は瓦解せず、原発なしでも電力が不足しないのに、利権を守るために電力が不足すると脅し、大停電で死人が出ると脅し、経済がめちゃめちゃになると同じ、生活レベルが極端に落ちると脅したが、まったくのデタラメだったことがわかった。
そのため今度はあわてて、電力不足詐欺ではなく電気料金3倍詐欺論を持ち出しているが、だったら発送電分離し、電力の自由化を行い、これだけの事故を起こしながら、平然と役員報酬を復活するような詐欺集団東電以外に、電気を買えるようにしたら、まず間違いなく、東電より安全でかつ安価な電気が供給されるだろう。それはJAL破綻とLCCの参入の話と同じ。高慢経営のJALなんかより、はるかにLCCの方が安全で安いよねって話。
競争原理なき社会は崩壊する。でも今の日本は未だ業界を守ることばかり考えている。





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